全都市/新・財政健全度ランキング--刈谷、武蔵野、豊田がトップ3、地域格差が広がるなか、景気後退が地方財政を直撃

全都市/新・財政健全度ランキング--刈谷、武蔵野、豊田がトップ3、地域格差が広がるなか、景気後退が地方財政を直撃

北海道夕張市の破綻から2年余。同市では、厳しい再建計画に基づき、多くの公共施設が廃止される一方、行政サービスに対する住民負担が引き上げられるなど、その後の厳しい現実も伝わってきている。だが、こうした状況は決して対岸の火事ではない。

2007年6月に「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」が成立し、地方財政の健全化を判断するため、新たに4つの財政指標が設定された。そして08年9月、07年度決算数値を基にした全都道府県、市区町村の4指標が発表された。

それによると、財政再生基準にまで落ち込んでいる、いわゆるレッドカード状態にある自治体は夕張市を含む3団体、また早期健全化基準になっている(イエローカード状態)自治体は40団体にも及んでいる。今後は、これら基準に低落した自治体は財政再建計画の策定が義務づけられ、その進捗状況は毎年公表・監視されることになる。

全国の都市の財政状況について、東洋経済では各種指標を用いて「財政健全度ランキング」を作成している(小社刊『都市データパック』で詳細を掲載)。今回、上記4指標が公表されたのを受け、構成指標の一部変更等を行い、全都市の「新・財政健全度ランキング」を作成した。

ランキングは、構成15指標についてそれぞれ平均値を50とする偏差値を算出、それらの単純平均を総合評価として作成している。また15指標を「脱借金体質」、「弾力性・自立性」、「財政力」「財政基盤」の4つの観点にわけ、それぞれ順位づけしている。

対象は08年11月1日時点の全国784市だが、今回はデータのそろわない鹿児島県伊佐市は参考値とした。

上位で目立つ愛知県の都市

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集計の結果、ランキング1位は愛知県刈谷市で、2年連続の首位となった。「脱借金体質」で1位、「弾力性・自立性」で2位となるなど、ほとんどの財政関連指標が全国トップクラスにある。豊田自動織機、デンソー、アイシン精機など、トヨタ自動車系の主力大企業が本社を構えていることが大きく影響している。

2位は東京都武蔵野市。雑誌やテレビなどで人気の街として常に上位にランクされており、同市の中心でもある吉祥寺駅周辺はデパートのほか、各種の店舗が建ち並ぶ商業集積地でもある。また閑静な住宅地としても知られており、納税義務者1人あたり課税対象所得額は全国2位の496万円で、全国平均を190万円も上回っている。

3位は愛知県豊田市で、言わずと知れたトヨタ自動車のお膝元である。刈谷市や豊田市を含め愛知県下の都市が、トップ10中に6都市もランクインしているが、これらに共通しているのは、トヨタ自動車を中心とする自動車産業の一大集積地であり、これら企業群の本社、工場が集中的に立地している点にある。

06年度当時は、日本を含め世界経済が順調に拡大し、自動車産業とくにトヨタ自動車の成長は目立っていた。その効果は傘下、関連のグループ企業にも及び、地元自治体の財政にもプラスの影響をもたらした。これら自治体では安定した税収が確保できるため、地方債に頼らない財政運営ができる。ちなみに、6都市の「1人あたり地方債残高」は14万円から24万円と、全国平均(46万円)と比べ半分以下の水準でしかない。その結果、公債費負担なども軽く済むという好循環となっている。

財政面の地域格差は深刻化

財政健全度の高い自治体は東海地方のほか、関東、近畿の本州中部に集中している。上位100都市のうち、それ以外の地域からランクインしたのは、66位の徳島県阿南市のみ。青色LEDで有名な日亜化学本社・工場のほか、四国電力の火力発電所などが立地しており、税収面で恵まれている点が主因となっている。

一方、下位には、3大都市圏以外の地域の、とくに離島や山間部など県庁所在地や主要都市から距離のある、相対的に人口規模が小さい都市が並んでいる。こうした都市は、雇用を創出する主要な産業がなく、高齢化と人口の減少が進んでいるという共通点を持っている。

各都市の総合偏差値を都道府県別に単純平均してみると、東京や愛知は60を超え、関東から中部、近畿各府県でも50を超えるが、北海道や東北、九州の多くの県が45を下回っている。しかも前年と比較すると、偏差値が上がったのは偏差値の高い都府県であり、低い県の多くは前年よりさらに下がっている。このところ、地方間での経済格差の実態がクローズアップされてきたが、それが財政面での格差の拡大にもつながっていることが明らかになった。

新4指標の一つである「実質公債費比率」は自治体と公営企業などが発行した地方債の元利償還金の比率、つまり連結ベースで見た、その自治体の借金返済の大きさの度合いを表している。この比率が18%以上になると、地方債発行に際して国の許可が必要になり、該当する自治体が新たな借金をするためには適正な返済計画が求められる。07年度(05~07年度平均)は全国で142市が該当し、全国的に分布は散らばっているものの、やはり大都市圏以外で多いことが特徴である。そして、そのほとんどは本ランキング500位以下の下位に集中している。

米サブプライムローン問題が世界的な金融不安に発展し、その影響は実体経済にも波及、日・米・欧がいずれもマイナス成長へ転落する事態となっている。直近08年10月の日銀の地域経済報告(さくらレポート)は、全国の9地域すべてで7月に続き2期連続で景況感を下方修正した。地方の景気の落ち込みによる税収の減少は、ただでさえ厳しい地方自治体の財政に大きなダメージとなる。

トヨタ自動車は09年3月期の営業利益を当初見通しより1兆円も下方修正。これまでその恩恵を被ってきた、ランキング上位の自治体も安穏としている状況ではなくなってきた。

(加藤千明 =『東洋経済 統計月報』編集部)

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