「双子の妊娠・子育て」の決して甘くない現実 50年で割合が2倍になったのに情報が少ない

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また二卵性であっても、早産のリスクは高いことに変わりはない。二卵性の双子を出産した東京都の山下加奈さん(30代、仮名)が言う。

「切迫早産で管理入院していたのですが、27週のときに緊急帝王切開で生まれました。ともに1000gに満たない超未熟児でした。命はどうにか助けてもらいましたが、片方の子どもに障害が残りました。現在4歳ですが、将来的に実用的な歩行は厳しく、車いすの生活になるだろうと思っています。3歳までは、どうにかなるだろうと楽観的にとらえていましたが、やはり実用的な歩行が厳しいことが現実になるとつらいですね。将来はもう1人の子どもと同じ学校に行けるかどうかもまだわかりません。久しぶりに、子どもがNICUに入院中に障害の告知されたことを思い出しました。同じような人生を送らせてやれなかったことが今でも悔やまれます」

大阪府在住の大野さやかさん(40代、仮名)のケースは、出産自体にトラブルがなかったが、成長していくにつれて2人の差が開いていった。

「ほかの兄弟に比べると、そもそも双子なので2人とも身体的にも精神的にも成長が遅かったです。歩き出したのは1歳半。言葉は2歳超えても出ませんでした。ようやく1人が3歳になる直前にしゃべりだしたのですが、もう1人は一向にしゃべる気配がない。最初は個性の範囲だと思っていたのですが、日に日にそれが発達遅滞の範囲になり、結局3歳のときに片方の子どもは広汎性発達障害の認定を受けました。今5歳になりますが、2人に圧倒的な差が出てきてしまい正直戸惑っています。1人の成長を喜びつつも、もう1人の遅れに現実を突きつけられ落ち込んでいます」

育児破綻・児童虐待の予備軍は多い

妊娠・出産だけではなく、育児についても困難は伴う。1人を育て上げるだけでも相当な労力が必要とされるわけだが、それが2倍以上になるのだから、多胎育児の身体的・精神的な負担は計り知れない。前出の大木教授が言う。

「多胎児家庭は身体的・精神的・社会的負担が複合的であり、それに伴う育児不安、育児困難、児童虐待、抑うつなどさまざまな課題が挙がっています。母子手帳が主に単胎児を念頭に作られているように、多胎児に関する情報は単胎児に比べると不足しています。その結果、不妊治療、妊娠の段階から精神的ストレス、育児上のリスクを高めます。多くの母親が自身の育児において虐待に近い体験を語っており、育児破綻や児童虐待は決して一部の例外ではなく潜在的な予備軍はかなり多いと考えています」

多胎育児の身体的・精神的な負担は計り知れない(筆者撮影)
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