"移民"じゃないからOK?「改正入管法」の不安 労働力不足が深刻化しているのは事実だが…

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それをこの度の入管法改正では「特定技能1種」と「特定技能2種」の2つの資格に再構築。旧来認められてきた高度な専門性を必要とする在留要件をおおむね「特定技能2種」にあてはめるとともに、新たに人材不足の産業分野における「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」として「特定技能1種」を位置付けた。

「特定技能2種」は家族の帯同も可能で、在留期間の上限はない。よって永住権取得に必要な「10年間の滞在」も満たすことができる。「特定技能1種」の滞在期間は通算で5年を限度とし、家族の帯同は基本的に認められず、受け入れ機関や登録支援機関による支援の対象となる。具体的には人材が特に不足している介護、農業、建設など14種の分野だ。

OECDの定義では「1年以上外国に居住する人」が移民

法律の構成としては、高度な専門性を有する外国人には長期滞在を許し、そこまで高度ではない労働者には短期で帰国してもらうことを前提とする。安倍首相が「移民政策ではない」と主張するのは、これゆえだろう。

では本当に流入してくる外国人たちは移民ではないのか。OECD(経済協力開発機構)の定義によると、移民とは「1年以上外国に居住する人」を意味し、国連の機関であるIOM(国際移住機関)は「本来の居住地を離れて、国境を越えるか、一国内で移動している、または移動したあらゆる人」と定義しており、国際的に定説があるわけではない。

一方で自民党の労働力確保に関する特命委員会が2016年5月24日に発表した「『共生の時代』に向けた外国人労働者受入れの基本的考え方」によれば、移民とは「入国の時点で永住権を有する者」を意味し、「就労目的の在留資格による受入れは『移民』に当たらない」として、かなり限定的な解釈をしている。

しかし自民党は初めから移民に否定的だったわけではない。

小泉政権時の2005年に中川秀直元幹事長が「外国人人材交流推進議員連盟」を設立。将来深刻化する人手不足を予想して今後50年で1000万人の移民を受け入れるとともに、移民庁を設置することなども検討。2008年6月には永住権取得に必要な居住期間を7年に短縮することや、帰化制度を簡略化して入国後10年で日本国籍を取得できることなども盛り込んだ案を福田康夫首相(当時)に提出している。

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