――まず海陽学園という学校の成り立ちからして独特ですね。
ええ。海陽学園を作ったのは、教育界の関係者ではありません。産業界のリーダーたちです。トヨタ自動車とJR東海、中部電力の3社が中核となって、次世代のリーダーを担うような学校を作ろうというのがきっかけでした。もちろん、3社だけでは難しいですから、東海圏を中心に約80社に寄付を募って設立されました。なので企業との関連は密接ですね。
――全寮制というスタイルも話題です。なぜ全寮制にしたのですか?
しばしば考えているのですが、今の若者は「何か」が足りない。その「何か」を考え詰めたときに、「人間力」だと思いました。漠然とした表現ですが、要するに「他者と上手に折り合いがつけられない」ということです。核家族化が進んで、少子化も進んでいます。そうすると家庭内では親に囲まれて蝶よ花よと育てられます。そうすると子供たち同士で相手のことを思慮しながら、物事を進めることができなくなります。
過去を懐かしむわけではないですが、昔のコミュニティでは年長者と年少者の区別なく遊んでいて、そこにルールが生まれ、他者と折り合いをつけることを肌で学びました。海陽学園では、そうしたコミュニティを再現してみようという試みをしています。