海陽学園、「日本一学費が高い」説は本当か? 中島尚正校長に「全寮制」の狙いを聞く

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「基礎学力は最低条件」と豪語するが、どのようにそれを培うのだろうか。多くの私学の生徒が大学受験に備えて、高校2年生くらいから予備校に通うが、海陽学園では塾に通うことはできない。生徒の生活スケジュールに時間的余裕がないことに加え、そもそも最寄り駅の三河大塚駅には大手予備校はない。

夜間学習の様子

それを補うのが、8時からの夜学習だ。部活動後の夕食を終えた生徒たちは着替えを済ませると夜8時からの夜間学習に備える。この夜間学習が海陽の強さの秘訣だろう。基本的には課題や自学自習が基本だが、FMによるキャリアイベントなど、多種多様だ。中には夜の教室での特別講義もある。海陽学園では教員の7割が敷地内に住んでいるからこそ可能なのだろう。

こうした学校内だけの取り組みのみで、1期2期ともに東大合格者に加え、3人の海外大学合格者(うち2人は帰国子女ではない)を輩出した。3人のうちひとりは家庭の関係上「やむをえず」東大に進学した。「塾に通わなくても学校の勉強だけで高い合格実績を残すことができる」。このことを立証したのは、快挙と言えるだろう。

海陽学園では、課外活動にも力を入れています。最もいい例が「企業訪問」ですね。せっかくうちに企業の方がFMとして来ていますから、生徒を企業に派遣します。ただ、会社を見学するという社会科見学的なものではなく、企業の最前線に生徒を入れてもらうのです。たとえばJR東海なら、客足が落ちるシーズンにどうやったらお客様を呼べるようなキャンペーンを打てばいいのか。関係部署に生徒を派遣して、実際に社員の前でプレゼンする機会をもらうのです。

「日本一学費が高い」は本当か

――しばしば海陽学園を形容する言葉として、「日本一学費が高い学校」という言い方をされますね。

ええ。取り組みに着目せずに、学費のところだけを取り出して言う方もいます。事実、支払う金額だけ見ると、年間約280万円です。ですがそこには食費に家賃、光熱費などすべての生活費が含まれています。授業料だけだと年間約70万円なので、単純に280万円という金額を取り上げて、ほかの私立と比較するのは違うのではないでしょうか。もしほかの私立と比較するなら、通学交通費や塾代、生活費も込みで比較していただかないとね……。それでも、絶対にそれ以上のものを生徒に準備している自信はあります。

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