東京医科大「差別入試」に損害賠償請求の動き 消費者団体が受験料の返還を求め団体訴訟へ

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そして、「女性及び浪人生である志願者は、このような公正かつ妥当な方法によらず選抜することがあらかじめ明らかであれば、一般に、受験しないと考えられることから、得点調整により合否に影響があったかにかかわらず、受験料相当額が損害になる」としているのだ。

なぜ、消費者機構日本が訴えを起こしたのか

消費者機構日本は8月27日から受験料返還を求める人たちからの情報提供を呼びかけ、9月18日時点で56名の過去の受験者より情報提供を受けて、今回の行動に出たという。どんな権限が民間団体にあるのかと不思議に思う読者も多いだろう。

本来、民事訴訟で訴訟する権利(原告適格)があるのは「判決によって保護されるべき法的利益が帰属する者」であり、通常、権利侵害を受けた当事者やその遺族だけだ。

今の日本では消費者団体訴訟制度が創設されている。まず、消費者契約法などに違反する事業者の不当な行為(不当な勧誘行為、不当な契約条項、誤認表示等)に対して、差止請求をすることができる制度(差止請求)ができた。

のちに、消費者の財産的被害を集団的に回復するための裁判手続を追行することができる制度(被害回復)ができた。いずれの場合も、消費者団体に訴訟を提起する権利が認められているが、前者の差止請求を行うことができる消費者団体を適格消費者団体、そのうち、さらに後者の損害賠償請求を行うことができる消費者団体を特定適格消費者団体という。適格消費者団体は現在19団体、そのうち消費者機構日本を含む3団体が特定適格消費者団体だ。

今回、消費者機構日本は特定適格消費者団体として、損害賠償請求訴訟を視野に入れて申し出を行ったわけだ。差止請求訴訟はこれまでも多くあるが、損害賠償請求はまだない。

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