パレスチナの支援打ち切りは弊害しかない アメリカは子どもたちの未来を潰す気か

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アメリカによる支援打ち切りによって、パレスチナの子どもたち向けの教育支援も頓挫の危機に(Mohammed Salem/ロイター)

アメリカのトランプ政権は国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に対する支援打ち切りを決定した。これは人道問題の政治利用にほかならない。トランプ政権は長年の紛争の火種に油を注ぎ、パレスチナの子どもの未来を潰そうとしている。

UNRWAはイスラエル建国に伴って発生したパレスチナ難民を支援する目的で1949年に設立された。医療、雇用、緊急食糧支援、住居などを提供し、現在200万人近くが支援を受けている。

支援打ち切りで教育支援も頓挫しそう

予算の大半は子どもや若者の教育に振り向けられ、その対象者の半分はレバノン、シリア、ヨルダンに、残り半分はガザ地区、ヨルダン川西岸地区に住んでいる。UNRWAはこのような地域で700近い学校を運営し、国連組織の中でも最も多くの子どもたちに教育の機会を提供してきた。ガザ地区の住民の実に75%はUNRWAから何らかの支援を受けており、同地区に住む小中学生の6割がUNRWAの学校に通っている。

だが、アメリカからの支援金が途絶えれば、UNRWAの価値ある支援活動は大きく後退してしまう。国連は「持続可能な開発目標」の一環として、2030年までにすべての子どもが教育を受けられるようにする、との目標を掲げるが、アメリカの支援打ち切りは、こうした国際公約に真っ向から違反する。

アメリカはこれまでUNRWA予算の25%近くを拠出。同機関の70年近い歴史を見ても最大、かつ最も信頼できる資金の担い手だった。同予算の8割は上位10カ国によってカバーされており、アメリカが抜ける影響は大きい。不足分を肩代わりしなければならなくなった他国の負担感はそうとうなものだ。

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