乙武洋匡が見たガザ地区の痛ましすぎる現実

失業率40%超、空爆が日常の難民キャンプ

どこかで見覚えがある男の肖像画は…

「ガザ」と聞いて、皆さんは何を連想するだろうか。

ある人は「紛争」という言葉を思い浮かべ、ある人は「イスラエルに封鎖された場所」というイメージを抱くかもしれない。どちらも間違いではない。大規模な侵攻は2014年を最後に一応は終結しているものの、いまでも空爆は日常茶飯事で行われているし、およそ365平方キロメートルの領域はすべてフェンスや巨大なコンクリート壁で囲まれており、イスラエルが設けた検問所によって人や物資の出入りを厳しく制限されている。ガザが、“天井のない監獄”と表現されるのも、そのためだ。

「オトさん、今年の夏、僕と一緒にガザに行きませんか?」

友人の税所篤快君からそんな誘いを受けたのは、昨年5月のことだ。“世界最強”とも言われる日本のパスポートをもってしても、旅行者としては訪れることができないガザ地区だが、今回は税所君が友人と立ち上げた「Japan Gaza Innovation Challenge」というガザの人々を対象としたビジネスコンテストの特別ゲストとして、UNRWA(国際連合パレスチナ難民救済事業機関)から招待状を出していただけるという。

二つ返事でガザ行きを決めたけれど…

ガザを訪れる機会など、なかなかあるものではない。二つ返事でガザ行きを決めた私は、早速、いくつかの書籍を取り寄せ、イスラエル・パレスチナ問題について、ユダヤ人とアラブ人の歴史について、ガザの状況について学ぶこととした。しかし、ページをめくるたびに心が重くなっていく。あまりに複雑に絡まった糸はどこからほぐしたらいいのか見えず、数年おきに大規模な空爆が行われる現状からは、とてもガザの人々の暮らしが改善される希望を見いだせなかった。

次第に、たやすくガザ行きを決断した自分自身を恨めしく思うようになっていた。私がガザを訪れたところで、いったい何になるというのだろうか。書籍やインターネットを通じてガザの窮状について学べば学ぶほど、彼らにとって何の役にも立てそうもない自分に無力感を覚えるばかり。かといって物見遊山的な訪問になってしまうことも心苦しい。気軽に返事をしてしまった自分をひどく呪ったが、最終的には税所君の言葉に背中を押された。

「つねに苦しい状況にあるガザの人々ですけど、オトさんとの出会いによって何か感じるものがあると思うんです」

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ビームスの流儀

1976年に創業し、90年代の渋カジブームを牽引したビームスが今も元気だ。創業以来赤字知らず。40年、最先端を走り続けられる秘密は何か。設楽洋社長への独占インタビューを掲載。