プロに入る前から「タイトルは最後についてくればいい」と考え、自分の欲求を抑えてチームの勝利を優先してきた。結果、創価大学時代は東京新大学リーグで5度のMVPに輝いている。
12年ドラフト2位でヤクルトに入団すると、シーズン前の春季キャンプで自信を深める出来事があった。ミーティングで講習を行った野村克也元監督から、「チームの優勝を最優先に考えることが、一番の目標に近づく」という話を聞いたのだ。小川は『ノムラの教え』をノートにメモしながら、「やっぱり、そういう考え方のほうがいい」と再確認した。
人のいいところを積極的に吸収しようとする姿勢も、小川の成長を支えてきた要素だ。左足を高く上げる独特のフォームを身につけたのは、大学3年の春季リーグ直後。2敗を喫して優勝を逃し、「何かを変えなければ」と思った。そんなとき、『ノーラン・ライアンのピッチャーズ・バイブル』という本に出会う。メジャーリーグで324勝を挙げた豪腕投手の投球理論に感銘を受け、小川は“ライアン投法”を習得した。以降、東京新大学リーグで無傷の21連勝を記録している。
「絶対に打たれない」と思って投げる
プロ1年目から勝ち星を伸ばすことができたのも、周囲の声に耳を傾けたことと無関係ではない。春季キャンプで首脳陣に、「足の上げ方が独特だから、フォームのバランスが崩れやすい。安定させるように」と言われた。そこで上げた足を降ろすまでに、微妙な間を取るようにした。そうしたことで打者はタイミングを取りづらくなり、小川自身は「コントロールの向上につながった」という。
シーズン開幕当初から先発ローテーションを任され、デビュー戦となった4月3日の広島戦で初勝利を飾った。6月29日の巨人戦では8勝目をマークし、最多勝争いの単独トップに立つ。捕手としてコンビを組む中村悠平はボールを受けながら、心地よくキャッチャーミットを響かせていた。
「感心できるのは、いろいろ考えてピッチングをすること。受けていて楽ですね。意図が伝わってくるし、こっちの意図を理解してくれます」
持ち球は140km台中盤のストレートと、スライダー、カットボール、フォーク、シュート、ツーシーム、チェンジアップ、カーブ。多彩な変化球を操ることが、小川の武器になっていると中村が続ける。
「いろんな球種があるから、バッターは狙いを絞りづらい。それと、小川は負けん気の強い投手です。ピンチになったら、『絶対に打たれない』と思って投げてくる。勝てるだけの要素がすごくありますね」
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