値上げ続く学校制服、知られざる業界「体質」 旧態依然の構造、業者と教員の癒着も残る

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通常の衣料とは異なり、参入障壁が高く、価格競争が起きにくい。小売物価統計調査では、全国の中学校の制服の平均価格は2017年で男子用が約3万3500円、女子用が約3万1850円と、この10年間で18〜19%値上がりした。

制服メーカー側にも言い分はある。原材料の高騰に加え、生徒の少人数化に伴い少量多品種の生産が増えたことだ。学校制服のウール生地でシェアトップを誇るニッケ(日本毛織)は3年前、羊毛価格の高止まりなどを理由に、学生服用の生地の価格を7%上げた。実は制服原価のうち、生地が4割強を占める。その生地が値上がりすれば、仕様を見直さないかぎり販売価格へ転嫁せざるをえない。

「お祝い着」の感覚からウールが好まれる

大半の学校制服は、生地にウールとポリエステルが使われる。最近は機能性の優れた安価な化学繊維素材が流通しているものの、防寒や色合いが重視されるほか、「『お祝い着』の感覚が根底にあるから」(業界関係者)、高価な天然素材のウールが好まれる。仕様を長年見直していないような制服はウール比率が高く、中にはウール100%のものもある。そうした制服は価格が当然高くつく。

教員の制服価格に対する意識は低い。教務で多忙なうえ、学校が費用を負担するわけではないからだ。ある制服メーカー幹部は「(製造の)指定を受けている以上は言い値で価格を上げられる」と語る。契約更新の時期が来ても、学校が既存業者から言われるままに募集要項を定め、素材や縫製の仕様を指定することで、他メーカーを事実上締め出してしまうケースも珍しくない。

こうした業界構造の中で、業者が重視するのは、学校の担当者とのパイプ作りになる。業界で最上級の接待は、制服の工場が集積する岡山への“視察旅行”。日頃から頻繁に連絡を取り、親密な関係構築にいそしむ。

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