アメリカ「Z世代」社会への底知れない影響力 銃規制がついに中間選挙主要テーマの1つに

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もっとも、水面下では変化の兆しがある。先行するのは、地方自治体である。フロリダでの銃撃事件以降、全米50州の半分にあたる25の州で、あわせて50の銃規制を強化する法律が成立している。

国政の焦点は、11月6日に投開票が行われる中間選挙に移ってきた。これまでの選挙と違うのは、民主党が銃規制の強化を声高に主張し始めていることだ。

これまで民主党は、保守的な地盤を持つ議員の存在を意識し、選挙では銃規制の強化を強く主張してこなかった。1990年代のビル・クリントン政権の時代に、殺傷力の強い銃に対する規制の強化を推進したことが、1994年の中間選挙での民主党大敗のひとつの要因とされた経験もある。銃規制への反論が強い選挙区では、銃と一緒に写ったテレビ広告を流すよう、党の選挙対策委員会が候補者に指示した例もあったという。

お金の面でも「規制派」が追い上げている

今回は違う。下院で民主党が注力するほぼすべての選挙区で、民主党の候補者は銃規制の強化を公約している。共和党からの奪取を狙う63の重点選挙区のうち、民主党の候補者が銃規制の強化を公約していないのは、わずかに1つの選挙区だけである。2016年の選挙では、下院で民主党が注力した36の選挙区のうち、銃規制の強化を民主党の候補が公約していた選挙区は4カ所だけだった。

テレビ広告も変わった。今回の中間選挙では、銃に関するテレビ広告のうち、7割弱が規制強化を訴える内容となっている。そのほとんどは、民主党の候補によるものだ。2016年の選挙では、規制強化を主張するテレビ広告は3割弱にすぎず、2014年の選挙に至っては1割に満たなかったという。

お金の面でも、規制強化派が追い上げる。これまでの選挙戦では、全米ライフル協会に代表される銃規制強化に反対する団体が、資金面では圧倒的な強さをみせてきた。2016年の選挙では、銃規制の強化に反対する団体による献金が、規制の強化に賛成する団体の5倍以上に達していた。今回の選挙でも、規制強化に反対する団体による献金は多いが、規制強化に賛成する団体を3割程度上回っているにすぎない。

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