アメリカ「Z世代」社会への底知れない影響力 銃規制がついに中間選挙主要テーマの1つに

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銃規制強化論の盛り上がりは、下院多数党の行方を左右する可能性がある。民主党にとって銃規制の強化は、家族などの安全に敏感な郊外の女性票の上積みが期待できる論点だからである。

従来の米国では、安全が争点になった選挙で郊外の女性票を狙うのは、もっぱら共和党だった。テロ対策や治安の維持では、民主党よりも共和党のほうが有権者の評価が高い傾向がある。家族などの安全を気にする女性は「Security mom(セキュリティ・マム)」と呼ばれ、共和党が注力する有権者層とされてきた。

銃規制の強化論は諸刃の剣

そのセキュリティ・マムが、学校や地域での銃からの安全という観点で、民主党を選ぶ可能性が指摘されている。下院で接戦となっている選挙区は、必ずしもトランプ大統領の支持が強くない郊外に多い。民主党にとって、銃規制の強化論による女性票の動員は、下院での多数党獲得に向けた切り札になるかもしれない。

実際に、銃規制の強化に賛成する割合は、男性よりも女性のほうが高い。キニピアック大学がフロリダでの銃撃事件の直後に行った世論調査によれば、殺傷能力の高い銃の販売に対する規制については、男性の4割強が反対している一方で、女性は8割近くが賛成している。

もっとも、銃規制の強化論は諸刃の剣である。民主党が銃規制の強化支持を前面に打ち出せば、それに対する反対も盛り上がる。規制の強化に反対する勢力が多く投票に足を運ぶ展開は、共和党への追い風だ。規制強化を支持する勢力にせよ、反対する勢力にせよ、いかに投票日当日の動員を成功させるかが勝負の分かれ目となる。

カギを握るのは、ミレニアル世代の動向である。同じ若い世代でも、10代が主力であるZ世代の多くは、まだ投票権を持たない。若者たちの運動がミレニアル世代を投票に向かわせることができるかが、中間選挙における銃規制強化論の威力を決める。

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