済美・中矢監督、被災者に伝えたかった思い 優勝候補の星稜を相手に2度の逆転劇で勝利

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星稜―済美。タイブレークの13回裏済美の攻撃。1番矢野が右翼ポール直撃の逆転サヨナラ満塁本塁打を放つ(写真:共同通信社)

 「豪雨で被災した方々に何かメッセージを!」

7月に起こった西日本豪雨災害の影響を受けた愛媛と広島の代表である済美、広陵の監督と選手たちにはこの質問が飛んだ。

「広島の置かれている状況を考えると、野球をしていいのかとも思うが、広島県の代表として夢を与えられるプレイをしたい」

広陵の中井哲之監督は広島大会を制したあとにこんなコメントを残した。

8月12日に行われた2回戦、二松学舎大付(東東京)との試合の前後にも同じことを問われ、こう答えた。

「7月はテレビも新聞も、豪雨災害のニュースばかりだったので、いいニュースを届けられたら」(中井監督)

もちろん、勝利を重ねることでいまも苦しんでいる人々を勇気づけられればいいのだが、勝負の世界だけに難しい。広陵は10安打を放ちながら、2対5で敗れた。

広陵のエース・森悠祐は「悔しい。少しでも明るいニュースを送りたかったのに」と試合後に語った。

済美・中矢監督にとっての甲子園

今回の豪雨災害によって、大きな被害を受けた愛媛の代表は済美だ。

1回戦で中央学院(西千葉)に競り勝ち、2回戦で星稜(石川)と対戦した。済美の中矢太監督は、「松井秀喜5敬遠」が起きた26年前の星稜戦で控え選手として明徳義塾(高知)のベンチにいた。

済美のコーチになるまでは明徳義塾の馬淵史郎監督のもとで長くコーチをつとめた。

だが、因縁の相手との対戦を前にしても、いつも通り冷静だった。いまのチーム力を分析し、不利な展開になることを予想して、準備を怠らなかった。

「点差をつけられても、粘り強く戦おう」と選手には言い含めていた。

だから、1対7とリードを広げられても、選手はあきらめなかった。ピンチをしのぎ、逆転のチャンスを待った。

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