GAFAの経営戦略、実は「古くさい」ものばかり 「覇権の4強」を経営戦略から読み解く

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GAFAは何もないところから新しいものを生み出したのではなく、すでに確立されている知見を発揮できる多種多様な人材が活躍するフィールドとして、たくさんの新しい発想を世の中に問いかけてきました。最先端の人材を貪欲に取り入れ、その人材が活躍できる舞台を提供し、それにより成長してきたのです。

またGAFAすべてに共通しているのは、わかりやすいプロフェッショナル、投資銀行やコンサルティング会社出身の人材だけでなく、社会科学の専門家、たとえば行動経済学やゲーム理論、マーケットデザインといった経済学などの博士課程出身者や、工学系でも一流の研究者としても活躍できる高度なノウハウを持っている人材を積極的に好待遇で採用しています。

彼らは超一線級の研究者であり、圧倒的な量のデータを活用できる魅力や、世界最高水準の知性に囲まれて戦うことに魅力を感じてアカデミアを去ったプロフェッショナルたちです。こうした方々が、最先端の研究を経営の現場に応用し、GAFAの成長を加速させています。

このように、人材に日本企業にはなかなか見受けられない多面的な多様性があり、そのように多様な人々が同じ文化の中で新しいものを作ろうという空気ができている。これは非常に大きいのではないかと思います。

人材はケイパビリティのビークル(容れ物)です。多種多様な経験や知見を自社に取り込むことは、マネジメントの困難につながります。もちろん、大卒の新人を一括採用して、画一的なトレーニングを一方向から教育するほうが簡単でしょう。

しかし、相容れない価値観の並存を許容するステークホルダーマネジメント、タレントマネジメント、組織管理、カルチャーづくり、ブランドづくり、プロダクトの多様化、さらに新しいチャレンジのための仕組みづくりなどの多々の取り組みの成果として、GAFAのように世界で成長する企業は、成果を残してきました。

こうした経営の重要性は、じつはずっと昔から指摘されてきました。歴史をひもとけば、壁画の時代からリーダーシップは存在していたし、組織のカルチャーもあったわけです。決して目新しいものではありません。ただ、世界が1つの世界的価値連鎖で接続される時代は、変化が大きく、絶えず新しい発想を活かしていかなければならなくなった。その結果、こうした組織のあり方の魅力が一段と高まっていると感じています。

いわば、彼らは、多種多様な人材の活躍のフィールドとして存在しており、そこにジョインしたさまざまな人材が世界各地分野別の組織で培ってきたスタンダードな打ち手を、これ以上なく洗練された方法で愚直に実践しているともいえるかもしれません。

GAFAが起こすかもしれない、合成の誤謬

――GAFAに対する利便性への期待と、人間の本能に忍び寄る不安が、今の時代は交錯しているように感じます。その点はどう感じますか。

じつは最近、私もさすがにグーグルが怖くなってきました(笑)。仕事で海外に行ったら、到着した途端にマップには今日の夜に宿泊するホテルが表示され、ウーバーで車を手配しますかと聞いてくるのです。Gメールや予定表からの情報が統合されて、パーソナルアシスタントのように私のアンドロイドが機能し始めています。

携帯電話の位置情報の共有をオンにしておくと、毎日自分がどこに行き、そこにどのくらい滞在したかの情報は筒抜けになります。それにメールや予定表を組み合わせると、私の日々の行動や交友関係は完全に把握できることになります。あるオフィスに3時間ほど滞在して、その後タクシーに乗ったけれど渋滞に巻き込まれた、とか、とても具体的な行動履歴を知らず知らずの間に共有しているのです。とりあえずいったんは機能はオフにしましたが、本当に消されているかどうかはわかりません。

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