引きこもりが救う?コンテンツ輸出の世界戦略

角川歴彦×川上量生対談(4)

2013年10月10日、株式会社KADOKAWAは新たな選書レーベル「角川EPUB選書」を創刊した。創刊ラインナップの中から、自身初の単著となる『ルールを変える思考法』を上梓した株式会社ドワンゴ代表取締役会長・川上量生氏、『グーグル、アップルに負けない著作権法』を上梓した株式会社KADOKAWA取締役会長・角川歴彦氏のお2人に登場していただき、グーグル、アップル、アマゾンに対抗して、日本のコンテンツ産業が生き残っていくための方法について、思う存分語り合っていただいた。
4回目のテーマは、日本のコンテンツのアジア展開、世界戦略である。

連載第1回目―「情報化社会で真の知識人は『コミュ障』の人間」はこちら

連載第2回目―「5年後、日本のメディアコンテンツはこうなる」はこちら

連載第3回目―「歴史を変えたコンテンツの共通点」はこちら

――今回は日本のコンテンツの世界戦略についてお聞きします。

角川:日本人は「物語力」が強いと思っています。ハリウッドも日本の原作が欲しいと言うでしょ? 日本は世界をまねる以上に、アジアの東の端に民主主義の花が開いて、憲法で言論の自由が与えられたわけです。だから、みんな好きなことを発表できる。これからはアジアの時代だと言っても、中国も韓国もインドもインドネシアもタイも、みんな宗教上の制約や政治的な規制、社会的な規制があって、自由に物語を作ろうと思っても、なかなかできないのです。

川上:そういう意味でも、日本の児童ポルノ禁止法の改正案や、宮崎駿監督の『風立ちぬ』で喫煙シーンが多すぎるとかいう批判(NPO法人・日本禁煙学会が公開中の同作についてメディアによるたばこの広告・宣伝を禁止した「たばこ規制枠組み条約」に違反し、未成年者喫煙防止法にも抵触するおそれがあると指摘した)を見ていると、日本もホントに変な国になりつつあるなと感じます。あのようなことは日本のコンテンツの競争力を下げますよね。実際、『ちびくろサンボ』が出なくなったりだとか(1988年の米ワシントンポスト紙の報道をきっかけに黒人差別表現に当たると指摘されて絶版、書店店頭からも撤去された)、そういうことが起こっているわけです。

――海外にコンテンツを売るときに、向こうの基準に合わせておかないと売れないという議論もありますが……。

川上:どっちもあると思うのです。競争は、自分から攻めるだけじゃなくて、相手から攻め込まれてくるのもある。国内マーケットが外に出せる作品ばかりになるということは、外からも侵略されやすいということですよ。だから、外国に合わせて国内しか通用しないものをなくしていくという議論はナンセンスで、外に通用するものは、別にそういうものを作ればいいのです。だいたい、外国に通用するコンテンツなんてごく一部しかない。全部そういうものにしようという理屈は、僕はおかしいと思います。

アメリカと同じ土俵で勝負していては、結局、資本力とかマーケティング力とか、そうしたところの勝負になってしまう。そうなると、攻め込まれてしまうのは目に見えています。こちらから攻めていくときだけ、同質化すればいいのです。海外版を作るとか、それでまったく問題ないと思います。

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