笑って許して!グローバルの無作法

タクシーのドアにはご用心!

 日本の製品は、高い品質を誇りながら、中国マーケットにうまく食い込めていない。その最大の理由は、ブランド戦略の甘さにある。この連載では、北京電通に7年駐在経験があり、グローバル企業のブランド戦略のコンサルティングを手掛ける著者が、中国人の心を掴むためのブランド創りを解説。教科書的なブランド論ではなく、ビジネスの現場で起きている事実をベースに、実践的なブランド戦略を発信する。 
日本とはひと味もふた味も違う中国のタクシー(写真:Imaginechina/アフロ)

すっぽ抜けたドアハンドル

それは2006年のとある日、まだ北京に新空港(現在の北京首都空港第3ターミナル)ができる以前の古い空港での出来事でした。出張帰りの私はいつ順番が来るとも知れぬ長蛇のタクシー待ちの列に並んで疲労困憊。ようやくあと3人で自分の番だと思ったとき、先頭の客の前に止まったのは朽ち果てたようにボロボロのタクシー。当時は今と違って北京のタクシーは、フォルクスワーゲンやシトロエンの年代物が多かったのです。ようやく自分の順番が来て勇んでタクシーのドアハンドルに手をかけた中年の中国人男性は、勢いよくハンドルを引っ張りました。

次の瞬間の光景は、まるでスローモーション再生のように私の脳裏に焼き付いています。引っ張ったドアのハンドルはそのままスポッと抜けてしまい、客はそのハンドルを中空で握りしめたままあぜんとしています。すると運転手が脱兎のごとく運転席から車の後方を回って客の前に現れ、「お前、俺の車を壊しやがったな。どうしてくれるんだ!」(当時の私の中国語は怪しいものでしたが、間違いなくそう言っていたはずです)と客に詰め寄ります。そんなとき、中国人は絶対にひるみません。客は客で激怒して「お前のタクシーがオンボロだからドアハンドルが抜けたんだろう。お前のせいだ」と怒鳴り返します。

その車はあまりにも年代ものでしたから、仮に私がドアを開けようとしても同じことが起こったでしょうから、客には落ち度はないと思うのですが、運転手は客に弁償させようと一歩も引きません。口論の原因となった「ドアハンドルのすっぽ抜け」は何とも間抜けで爆笑ものでしたが、彼らの口論のせいでタクシー待ちの行列は一歩も動かなくなってしまいました。

タクシー案内の係員は一応いるのですが、こうした場合、かかわり合いたくないので、間に入ることもしません。それでなくても長い列に並んでイライラの募っているほかの客たちが、一斉に罵声を浴びせ始めると、もうその場の収拾はつきません。その後、私はどれくらい待たされたのか、今となっては記憶すらありません。

中国で生きていると、こんな「リアル・コント」とでもいうべき珍事件に頻繁に出くわします。ネタに困っている日本のお笑い芸人の皆さんの参考になるかもしれません。

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