日本人が英語の成績が良くても話せないワケ 今の教育では英語は身に付けられない

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この30年間、学校ではコミュニケーション力を重視した英語教育が進められてきました。英語でのコミュニケーション力には「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能が必要ですが、これまでは「話す」「聞く」が重要視されてきました。その結果、同じ内容の反復練習、またはパターンプラクティスが中心となってしまいました。

さらにこれまでの英語学習は、「これを英語でいうには何という単語を使えばいいのだろう」ではなく、「テストに出る単語だから覚えよう」「受験に出るから覚えなければ」という学び方になりがちでした。だから、テストや受験が終わってしまえば忘れてしまう。これでは勉強しても言葉としての英語が身に付くはずはありません。

シェイクスピアの内容を覚えていない女子大生

中学1年生で1カ月間、アメリカの家庭にホームステイした男子は、「ぼくはホストファミリーと馬について2時間も話をしたことがいちばんの思い出になっている」と話してくれました。「2時間も英語で!?」と驚いた筆者が聞いてみたところ、彼は府中市の東京競馬場の近くで生まれ育ち、競馬場内の公園を遊び場に育ったため馬についてとても詳しいということでした。

自分の知っていることだからいくらでも話ができ、相手もその話を聞いてくれてやり取りが生まれ、さらに話が進んでいったということです。長時間にわたって話ができたことで、英語を話すことにも自信が持てたようでした。

一方、「高校での英語の授業では、シェイクスピア作品を取り上げても文学を読むのではなく、文法を学ぶツールとしていたから、物語のストーリーなんてぜんぜん覚えていない」と話す東京都の公立高校出身の女子大生がいました。

彼女は高校時代、教科書やサイドリーダーの本を読むのにひたすら辞書を引き、文法を解釈し、文章を訳していました。なので、肝心なストーリー(内容)自体はまったく覚えていないというのです。「せっかくシェイクスピアを題材にしていたのにもったいなかった」と残念に思っている様子でした。

私たちは言葉(母語であれ英語であれ)を、自分の思考や気持ちを表現することに使います。客観的に何かを表現するにしても、自分の感情を抜きに表現することはないでしょう。自分の思考や感情のないところに言語活動は生まれませんから、英語もそれらを表現することを通して身に付ける必要があります。

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