「ジャパニーズウイスキー」の悲しすぎる現実 輸入モノが「国産」に化ける、緩すぎる規制

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こうしたウイスキーは、モルト原酒とグレーン原酒をブレンドして作られる。サントリーは「早期に(高級品の)計画出荷を行い、全体で供給バランスを取っているため増産が可能」(会社側)とする。熟成期間の短いモルト原酒やグレーン原酒が使用できることも要因だが、「その比率は公表していない」(同社)。

輸入原酒使っても、国産ウイスキー?

通常、食品表示基準では、最も多く使っている原料を最初に記載する必要があるが、酒類は適用外。そのため、専門家からは「安価なウイスキーは大半がグレーンでもおかしくない」(ウイスキー評論家の土屋守氏)との声も上がる。

ブームの陰で、ジャパニーズウイスキーの表記をめぐる問題も浮上している。

みりんなどの調味料を手掛けるサン.フーズ(山梨県)は「御勅使(みだい)」や「富士山」を製造。「富士山」はジャパニーズウイスキーを名乗るが、「自社で蒸留した原酒に海外から輸入した原酒を加えて、ブレンドしている」と、担当者はあっけらかんと話す。

国産のウイスキーといっても、その内実はさまざまだ。スコットランドや米国ではウイスキーの製法や表記について、厳しく法律で定められている。ところが日本の酒税法では、輸入した原酒を国内でブレンドしたりボトル詰めしたりすれば「国産」と表示できる。ジャパニーズウイスキーの明確な定義はない。

業界で著名な「イチローズモルト」を製造・販売するベンチャーウイスキー(埼玉県)は、一部の銘柄で自社で蒸留したものに5大ウイスキー産地の原酒を加えている。

「以前は一部で『秩父ブレンデッド』としていたが、秩父蒸溜所の原酒のみを使っていると誤解されるおそれがあり、現在は『ワールドブレンデッド』という表記に変えた」(肥土(あくと)伊知郎社長)。

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