「東大女子」が自分の大学名をごまかす理由 これこそが世の中の矛盾の象徴ではないか

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1982年5月1日時点での学部学生の女性比率は約7%だったというから、この35年間で3倍近くに増えたという見方はできる。しかし実は2003年には18%、2005年には19%をすでに超えており、それ以降はほぼ横ばい状態なのだ。「2割の壁」が越えられない。

そこで2016年11月、東大は一人暮らしの女子学生向けに月額3万円の家賃を補助する制度を導入することを発表した。

これに対しては、男子志願者に対する逆差別ではないかという批判も噴出した。そこだけを見ればたしかに不平等だ。しかし問題はそこだけではないのである。

「東大女子」の四字熟語が奏でる不協和音

拙著『ルポ東大女子』を書くために、多くの東大女子をインタビューし、本音に迫った。以下、一部を抜粋する。

「早稲田、慶應あたりのひとたちに対しては、勝手にこっちが気を遣っちゃうことはあります。もしかしてこの中に東大を不合格になっていまでもそれを引きずっているひとがいたらどうしようと。完全に余計なお世話だとは思うんですけど」

東大女子の多くは、合コンなどで大学名をごまかしたことがあると証言する。実際に「東大」に対してコンプレックスを抱いているひとが、学生に限らず一定数いることは間違いないだろう。一方で、東大女子の側がそれを気にしすぎるという部分もなきにしもあらず。そこに見えない壁ができる。

「東大の授業の中でも、女子が大きな声で発言するとあまりいい顔をされません。空気を読んで『わかんない』って顔をすることがあります。男子に対しては論破しないように気をつけています。東大に来ているような男子はプライドがすごく高いので(笑)。バカだと思われているほうが東大の中でもうまくいく気がします」

東大の教室の中ですら、そんなことにまで気を遣わなければならないとは驚きだ。

「東大に入ること自体にはすごく能力も必要だし、みんな、熱意をもって入ってくるんですが、同時に、女子なのに東大に入ってしまってこれから先大丈夫かなっていう漠然とした不安もあると思います。インターネットを見ても怖いことばかり書いてあるし……。『結婚できない』とか『学歴で逆差別を受ける』とか、特に大学を出てからが怖い」

偏差値ヒエラルキーの最高峰にあり、生き馬の目を抜く競争社会に生きるという選択から専業主婦になるという選択までを視野に入れられる「東大女子」。もし彼女たちが、それでもなんらかの葛藤や生きづらさを抱えているのなら、それはそのまま世の中の矛盾の象徴ではないか。

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