高学歴女子にシワ寄せされる社会の過剰期待 「貢献せよ」しかし「みっともないのはNGだ」
最近、若い女性の「化粧」をめぐって周辺が騒がしい。
9月中旬から展開された、東急電鉄の広告シリーズ『わたしの東急線通学日記』がネットで物議を醸した。車内マナーの啓発を狙ったものだが、「歩きスマホ」や「列の割り込み」「車内でリュックを下ろさない」と並ぶマナー違反の事例の中、女性が電車の中で化粧をする姿を「みっともない」と主観的に評したことに女性からの批判が噴き上がったのだ。
「他者に迷惑をかける明確な理由がある他の事例なら社会生活のマナーとして納得がいくが、なぜ女の化粧が”みっともない”という言葉で批判されるのか」「社会が女に期待する価値観の押し付けでしかないのではないか」――。
中でも「お出かけ前になぜできない」という広告中のコピーには「男性同様に長時間労働をこなし、化粧の時間がない女性もいる」との声があり、特に若い世代の女性の就業率上昇と労働内容の変化といった、時代の反映を感じさせられる。
資生堂インテグレートのCMが炎上し、放送休止・ネット動画削除へと至ったのも記憶に新しい。「25歳からは女の子じゃない」「イイ女めざそう」「頑張っている様子が顔に出ているうちはプロじゃない」とのメッセージやコピーには、ターゲットのはずの若い女性たちから「昭和の価値観」「いまだに女を年齢で脅すなんて古い」「もう買わない」「キモい」と激しい言葉で反発が起こった。
「女は働け産め育てろ介護せよ」の”無理ゲー”
一億総活躍の旗印の下、「女性も輝け」との大号令がかかる現代。女性も労働力として貢献せよ、アシスタントの立場に甘んじず専門性の高い”立派な”社会人たれ、そして既に結婚も出産も可能性の絶たれたアラフォーおばさんたちを反面教師として、いずれ適齢期を逃さぬうちにしっかり産み育て出生率上昇にも寄与せよ。「あれもこれも社会に貢献せよ」しかも「みっともないのはNG」、それがいまの若い女性に要求される生き方の”ボトムライン”だ。
「女性活用」は、疑う余地のない正義として響く。それは冷静になって考えてみれば「女は働け産め育てろ介護せよ」の”無理ゲー”な内実を集約した呪文であっても、だ。いま社会人として成長過程にある若い高学歴女子たちは、前人未踏の「女性活用」の戦場へと歩を進めていかざるを得ない自分たちが、360度全方向から放たれる、無責任で容赦なく「求めすぎ」な社会的要請の標的となっていることに薄々気づき、反発し、防衛を始めている。
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