ヤフー、「価格破壊」でネット通販天下取りへ 出店費用無料化の激震。宿敵・楽天はどう動くか

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とはいえ、ヤフーにとって、当面の最大のライバルとなるのは間違いなく楽天だ。ネット通販売上高で国内首位のアマゾンは自社で在庫を仕入れる直販モデルが主体のため、“場所”を提供して売買を成立させる楽天とヤフーの事業モデルとは性質が異なる。つまり、ヤフーが今回の出店者誘導策でシェアを奪い取る相手は、必然的に楽天となる。

現在のところ、楽天が運営する「楽天市場」の店舗数及び商品数は、約4万1000店及び1億4600万点。対する「Yahoo!ショッピング」は店舗数が約2万店で、「ヤフオク!」の1.6万店を足しても楽天には及ばない。商品点数も「Yahoo!ショッピング」が8000万点と見劣りする。

出店費用に関しては、楽天市場は出店初期費用6万円、月額出店料1万9500~10万円、売上高手数料2.0~6.5%を店舗から徴収。Yahoo!ショッピングは出店初期費用2万1000円、月額出店料一律2万5000円、売上高手数料1.7~6%だった(ヤフーは2013年7月に価格体系を変更したばかり)。

今回、ヤフーはこれを全面無料化するというのだから、楽天に与えるインパクトは当然大きい。

楽天も値下げに追随か?

問題は楽天側がどう出るか。楽天は現状静観の構えだが、すでに市場関係者の間では「楽天にとってはヤフーの売り手・買い手の動向次第では手数料無料化を追随せざるを得ない可能性がある」との声が上がっている。アマゾンも仮想商店街事業を手掛けているため、その部分については影響を受ける可能性がありそうだ。

ヤフーは出店者の誘致と同時に、これまで手薄だったYahoo!ショッピング内の検索機能改善や「Yahoo!検索」「Yahoo!知恵袋」などからの集客導線強化も行う。つまり、全社を挙げてネット通販強化を進めていく。

ネット通販事業では、長らく「国内3位」という屈辱に甘んじていた。果たして、「価格破壊」と「総合力結集」により、アマゾン、楽天の牙城を崩すことはできるだろうか。背水の陣の戦いが今まさに始まった。

(撮影:大澤 誠)
 

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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