CX-5「爆売れ」のマツダが米国で大苦戦の事情 SUBARU手本に改革着手も「脱値引き」道半ば

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インセンティブの上昇で苦しんでいるのは、トヨタ自動車や日産自動車など、他メーカーも同じだ。競合他社が上げればそれに合わせざるをえず、額を下げるタイミングが難しい「チキンレース」状態だ。マツダにはトラウマもある。2017年3月期は、ブランド力向上を優先してインセンティブ引き上げを後回しにしたが、他社の値引き競争にのみ込まれ販売台数を大幅に減らした(「マツダの悩みは『トランプリスク』より深刻だ」)。2017年12月のマツダのインセンティブは全車種平均で2016年12月と比べ3割増と、日系他社と比べても突出した伸び率になっている。

スバルのSUV「フォレスター」。モデル末期だが、米国でも好調な販売を維持する。2017年12月のインセンティブはマツダ「CX-5」の半分の1400ドル台と抑えられている(撮影:尾形文繁)

そんな中、比較的インセンティブを抑えられているのがホンダとSUBARU(スバル)だ。このテーマでは「スバルさんはダントツ低いと思いますが」と藤本常務が語り出すことからも、マツダがスバルを意識していることがうかがえる。米国への依存度が高い中、2017年12月の1台当たりインセンティブは1257ドルと前年同月比7%増に抑えた。

販売店改革への取り組みで明暗分かれる

スバルは、米国で顧客満足度を上げるための販売店改革を一足先に済ませ、雪の多い北部(スノーベルト)などでSUVの性能の高さが浸透していることを背景に、インセンティブに頼らない販売をこの10年ほどで確立できた。

マツダが米国で導入を進める新世代店舗。白と黒を基調にした高級感ある内装が特徴の一つだ(写真:マツダ)

「米国市場は大きく、収益は捨てがたい」。マツダの毛籠勝弘専務執行役員は2016年から北米統括会社のトップとして米国の販売店改革に意欲を燃やす。「SKYACTIV技術」や「魂動デザイン」で商品力が引き上がった今、インセンティブを抑えるためのブランド力構築には販売店改革が不可欠と訴える。顧客との間により深いつながりを築き、値引きではなく、商品の価値で車を買ってもらうのが狙いだ(「マツダ、最重要の米国で挑む『ブランド改革』」)。

そのために、マツダ車だけを取り扱う専売店化の促進や、大幅値引きをするディーラーとの契約解除もいとわず進めている。店舗へのインセンティブには新基準を導入した。顧客へのアンケート結果に加え、店舗の内外装や設備、ホームページのデザインも評価し、インセンティブ全体の半分が新基準によって決まる。ただ、現時点ではインセンティブに依存した販売から脱却できておらず、販売店改革の成果発現は、一朝一夕では難しいのが現実だ。

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