1万6000円台回復は「岩盤規制」対応がカギ アベノミクス相場第2幕に備えよ!

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日本株は今年5月の急落前までの値上がりが急ピッチだっただけに、量的緩和縮小観測の高まりによって受けたダメージも大きかった。同月の大幅下落はFRBのバーナンキ議長が前日5月22日の米国議会で、「資産購入縮小もありうる」などと発言したのが引き金になった。

ただ、「本格引き締めへの移行ではないというFRBのメッセージが理解されれば、市場は落ち着きを取り戻すはず」(ちばぎんアセットの奥村氏)。そうなれば今後、仮に米長期金利が一段と上昇しても、緩やかなものにとどまりそう。投資家のリスク許容度を測る指数とされるボラティリティ・インデックス(VIX)も6月下旬には警戒域入りの分岐点とされる20ポイントを上回ったが、足元は13~14ポイントと低位安定(右図)。狼狽ムードはさほど感じられない。

業績上振れ期待根強く下値の余地は限定的か

投資家が比較的冷静なのは、世界的に景気浮揚機運が高まっているからだ。日本市場の場合、企業業績の上方修正期待も株価を下支えする。

現在の日経平均ベースの予想株価収益率(PER)は約16倍。過去の水準や他国との比較では「割高でも割安でもない」(シンガポールに拠点を置くテンプルトン・アセットマネジメントのポートフォリオ・マネージャー、アラン・チュア氏)。だが、円安で収益が押し上げられるとの見方は根強く、株価にも上値余地がありそうだ。

日経平均と、同予想PERから逆算した予想1株当たり利益(EPS)は約911円。「最終的にはEPSが1000円程度まで拡大する」(岡三証券の石黒英之・日本株式戦略グループ長)との指摘は少なくない。つまり、PERで「割高でも割安でもない」16倍まで買われるならば、日経平均は1万6000円に達する計算だ。

「年内は底堅く推移する」とのシナリオが市場では優勢だが、同水準を回復できるかは見方が分かれる。富国生命投資顧問の櫻井祐記社長は、「1万6000円まで値上がりすれば御の字」とやや慎重だ。

マーケットにとって、来年4月の消費税増税は既定路線。国内景気への悪影響は気になるが、法人税減税などの激変緩和措置が打ち出されれば、株価の大きな下押し圧力にはならないだろう。市場参加者が日本株の先行きに対してあまり強気になることができないのは消費税議論の趨勢よりもむしろ、雇用、医療、農業など「岩盤」と呼ばれる分野の規制に安倍内閣がどこまでメスを入れるかを測りかねているためだ。

メインプレーヤーの外国人投資家は、昨年11月第2週から今年7月第3週までの間、日本株を計11兆円余り買い越した。しかし、参議院選挙が行われた7月21日以降は「売り買い交錯」へ変化。同月第4週から9月第2週までの買い越し額は700億円強にすぎない。選挙での「ねじれ」解消後も岩盤規制を取り払おうとの意欲が現政権には乏しい、と判断した海外勢の一部が、業を煮やして日本株を処分したとも読める。

「外国人が注視するのは安倍首相のリーダーシップ」(富国生命投資顧問の櫻井氏)。2020年夏季五輪の東京開催決定という強烈な追い風をどこまで生かすことができるか。市場から問われているのは、規制緩和や成長戦略実行への本気度だ。

 

(週刊東洋経済2013年10月5日号)

週刊東洋経済編集部
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