安全資産・金の価格が急上昇しているワケ ビットコインの値動きと逆相関になっている

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米国の長期金利は足元で2.6%程度あり、インフレ率が2%に到達したとしても、実質金利はプラスだ。過去金価格が上昇している時には、実質金利がマイナス圏に沈んでいたことが多く、利上げは金価格の重石になる。現在の金価格上昇の潮目が変わるとすれば、3月のFOMCで利上げがあるかどうかがポイントとなるだろう。

一方で、先に挙げたような不安が払拭されないのも事実だ。なんらかの資産でバブルが崩壊したり、中東情勢に異変があれば、金の買い材料になる可能性もあり、注視が必要だ。

直近で、大きな価格変動により金価格に影響を与えたのは仮想通貨のビットコインだ。金とビットコインは通貨の代替として類似した性質を持つといわれ、注目されている。

ビットコインは金のライバル?

豊島氏によれば、「ビットコインが金のシェアを奪っているのは事実」だという。金先物やFX(外国為替証拠金取引)の投資家が、ビットコイン投資へ移行するケースも多くなってきている。

金とビットコインの値動きを比較すると、基本的には逆相関の関係になっている。しかし、年末年始には連動して動いていたことが見て取れる。この期間は、ほかの通貨に対する代替資産として金とビットコインが同じ働きをしていた可能性がある。1月中旬にかけてビットコインが暴落し、資金は金へと回帰している。

現状、ビットコインの価格変動は大きく、リスク選好の強い人向けの資産であり、金の優位性はある程度保たれているといえるだろう。

しかし、ビットコインの登場で投資家が金とは異なる通貨代替手段を持つことができるようになったのは事実だ。金とビットコインは同様に通貨の代替としての機能を持ちうるが、金は価値の保存に優れ、ビットコインは価値の交換手段としてより優れている。

今後、ビットコインをめぐる環境整備が進み、価格の乱高下が落ち着いたり、決済手段としての活用が広がったりすれば、金にとっては手強いライバルになる可能性がある。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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