NECが赤字の「債務超過会社」を買収するワケ 「海外セキュリティ拡大」の起爆剤となるか

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英ノースゲート・パブリック・サービス社の買収を発表する新野隆社長(撮影:今井康一)

1月9日。通信インフラ設備で国内首位のNECが、英ノースゲート・パブリック・サービス社(以下NPS)を4億7500万ポンド(約713億円)で買収すると発表した。買収資金はNECが現在持っている現預金(2017年9月末2399億円保有)を充てる。1月末をメドに買収を完了する。

1969年設立のNPSは政府向けや警察向けが主体のセキュリティに強いソフトウェア会社。犯罪事案管理プラットフォームは英国でシェア29%、自動ナンバープレート読み取りシステムや違反処理システムでは独占的な地位を持つのだそうだ。公営住宅の管理プラットフォームにも強みを持つ。

減収に加え、赤字に転落

NECの顔認証技術や人工知能(AI)技術で今後シナジーが見込めるほか、海外でセキュリティを伸ばす橋頭堡になりうると判断して買収に踏み切った。オーストラリアやシンガポールなど「英連邦(コモンウェルス)」への横展開が実現すれば、海外セキュリティ事業が大きく伸びるという皮算用も見え隠れする。

2017年4月期のNPSの売上高は1億6350万ポンド(約245億円)で前期比1900万ポンド(約28億円)の減収だった。「採算の低いBPO(間接業務受託)サービスを縮小している影響」(NECの山品正勝グローバルビジネスユニット担当執行役員)だという。

他方、営業損益は420万ポンド(約6億円)の赤字だった。山品執行役員によれば、営業赤字はBPOサービス縮小などなど構造改革の影響。2016年4月期は690万ポンド(約10億円)の営業黒字だったほか、買収後は構造改革費用がなくなり黒字化が見込めるという。

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