「副業解禁」を一括りに論じてはいけない理由 生活補助と小遣い稼ぎでは意味が全然違う
副業解禁――。
厚生労働省は11月20日、企業が就業規則を制定する際の公的なひな型として影響力を持つ「モデル就業規則」について、副業を認める内容に改正する案を有識者検討会に提示した。今年度内にも副業・兼業が公的に事実上、解禁される見通しになってきた。
これに対して、世論は、「多様な働き方を促しすばらしい」という声や、「副業が長時間労働の温床となり過労死促進につながる」といった意見もあり、賛否両論だ。
副業には5つのタイプがある
私は、社会保険労務士としてこれまでも副業に関してもさまざまな相談を受けてきたが、副業を行う理由は人それぞれであるのに、肯定するにせよ否定するにせよ、「副業解禁」と一言で括ってしまうから、問題の本質が見えなくなってしまっている面もあると感じている。
私なりの分類であるが、副業には5つのタイプがある。「生活苦型」「小遣い稼ぎ型」「やりたいこと型」「本業スキルアップ型」「起業・転職準備型」である。1つの副業が複数のタイプに重なることもあるが、それぞれのタイプによって労働者のスタンスや企業側の対応、注意点、法的な支援などは変わってくる。
(1)生活苦型副業
「生活苦型副業」は、本業の賃金が少なすぎて生活に必要な収入が得られず、やむをえず副業を行っているというタイプの副業である。本業の仕事を持ちつつ、早朝や深夜にコンビニや飲食店で勤務をするというようなイメージだ。
ただ、本業でフルタイム勤務しているにもかかわらず生活が苦しいという職場は違法状態になっているケースも考えられる。
「罰金制度のために手取りが極端に少なくなってしまう」「フルコミッション制で保障給がない」「基本給が低いうえに残業代も支払われない(サービス残業が横行している)」などはすべて違法である。
上記のような場合は、労働基準監督署への通報とそれに基づく指導によって改善される可能性はある。本来受け取れるべき賃金が正しく支払われるようになれば、望まない副業をやめて心身を休めたり、家族との時間を過ごすことができるようになったりするかもしれない。
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