「戌の日」は何の日? イクメンとパパ消費 新しい父親像や新しい消費のかたちに、社会を見る

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ミクロな消費行動の中に見えるマクロな社会

戌の日をめぐって、消費やビジネスも確実に動く。都内の有名な安産祈願の神社は、戌の日になると行列ができる。神社の周りにはマタニティ関連のお店ができ、出産や育児に関わる企業が熱心にチラシを配る風景も見ることができる。レストランもできるし、記念撮影の場所もある。言い伝えを手掛かりにして、一つの現実が作られている。

そういえば、ある父親は、戌の日にどうしても外せない仕事が入ってしまい、後で大げんかになったそうだ。イクメンや育児休暇の問題に通じるものがないだろうか。ミクロな消費行動の中に、マクロな社会が見えるように思う。

僕自身にとっても、戌の日は、研究上の再発見となった。これをきっかけに研究に割く時間が増えたら、「イクメン」的な活動に影響してしまうかもしれないが、あまり仕事と家庭を分けて考えないほうがいいのかもしれない。仕事の中に家庭が見えるし、家庭の中に仕事も見えると言ってみたら、どうだろう。

 

初出:2013.8.24「週刊東洋経済(ネット保険&共済

(担当者通信欄)

この記事を読むまで、担当者は戌の日を知らない側の人間でした。友人知人の出産は年々増えてきていますが、当事者でないとなかなか行き着かない類のイベントということでしょうか。以降、お父さんお母さんになった知り合いに「戌の日」のことを聞いてみるようにしているのですが、多くの方が、実際にお参りに行っているようです。

「戌の日」の参拝というイベントのあり方が、おそらく社会の変遷の中でその影響を受け、ゆらぎながらも続いてきたように、何かを受け継ぎ更新しながら未来に繋ぐということは、ビジネスの分野にも新鮮な風を入れているのかもしれません。

さて、水越康介先生の「理論+リアルのマーケティング」、最新記事は2013年9月17日(火)発売の「週刊東洋経済(特集は、アップル再起動&電子部品サバイバル)」に掲載です!
【「本質直観」のすすめ、まずは自分に注目せよ】
一年にわたる連載も今回が最終回です!この「理論+リアルのマーケティング」を貫徹する主張があったとしたらそれは、「当たり前や常識を疑う術を身に付けよう」ということ。それを踏まえて「本質直観」のアイデアを提示します。マーケティング・リサーチに哲学の方法を取り入れるとしたら? 

 

 
マーケティングの基本から勉強してみたい人のために!専門用語に混乱しない、親切設計の入門テキスト。水越康介・黒岩健一郎『マーケティングをつかむ』(2012年、有斐閣)
 
 
企業や市場の潜在性を掘り起こすための新しいマーケティング概念を提示!京都花街、マルちゃん鍋用ラーメン、はとバス、ロック・フィールド……水越康介・栗木契・吉田満梨/編『マーケティング・リフレーミング』(有斐閣、2012年)


 

水越 康介 経営学者

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みずこし こうすけ / Kosuke Mizukoshi

1978年生まれ。2000年神戸大学経営学部卒業、2005年神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。博士(商学)。2005年より首都大学東京、同大学院研究員を経て、2007年から首都大学東京大学院 社会科学研究科 経営学専攻 准教授。専攻はマーケティング論、商業論、消費者行動論。学術分野のほか、民間シンクタンクでの研究活動などを通して、新しい価値の創造を目指す。教育活動として、ユーザー参加型製品開発プロジェクト「Sカレ」の参加学生指導などにも力を注ぐ。著書に『企業と市場と観察者――マーケティング方法論研究の新地平』(有斐閣、2011年)、『Q&A マーケティングの基本50』(日本経済新聞出版社、2010年)、編著に『マーケティング・リフレーミング――視点が変わると価値が生まれる』(有斐閣、2012年)、『仮想経験のデザイン インターネットマーケティングの新地平』(有斐閣、2006年)、共著に『マーケティングをつかむ』(有斐閣、2012年)、『病院組織のマネジメント』(硯学舎、2010年)、『ビジネス三國志 マーケティングに活かす複合競争分析』(プレジデント社、2009年)、『マーケティング優良企業の条件 創造的適応への挑戦』(日本経済新聞社、2008年)。 ⇒【Webサイト】【Twitter(@mizkos)

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