48歳バンドマンの「しぶとすぎる」生き残り術 結成28年、酸いも甘いも噛み分け進んできた

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第2メジャー期は、期待どおりに売るためのさまざまなアイデアがバンドに注ぎ込まれた。20周年にリリースしたベストアルバムを『フラカン入門』というタイトルにして『石ノ森章太郎のマンガ家入門』とコラボしたアルバムジャケットを制作したり、『深夜高速』1曲だけを13アーティストがカバーしたアルバムをリリースしたりと、話題性の高い企画を次々に実現。冒頭のバンド史上初の武道館ライブを成功させたのもレーベルスタッフの貢献が大きいという。

「武道館ライブを成功させたのもレーベルスタッフの貢献が大きい」(撮影:HayachiN氏)

再びインディーズでの活動に軸足を移した3つの理由

しかし、8年経過した2016年には離れ、現在バンドは自主レーベル「チキン・スキン・レコード」を拠点として、再びインディーズでの活動に軸足を移している。

なぜか? 理由は3つあるという。

「メジャーには合わせて13年くらいいて、本当に手厚くやってくれました。感謝しかない。なんだけど、正直売れていない。だから、フラワーカンパニーズというバンドはメジャーでは売りにくいバンドなのかなと思い至ったんですよね。それが1つ。

あと、単にCDが売れない時代になってきて、メジャーでもインディーズでも枚数はたぶんそんなに変わらないだろうなというのが1つ。

すると、今いるお客さんを大切にしつつ、自分たちの手で新たに広げていかないとならないんですが、武道館でいちばん頑張ってくれたスタッフが去年ソニーを辞めてわれわれの活動を手伝ってくれることになって。その人と、全国各地には僕らのライブ活動を支えてくれているイベンターさんもいてくれるので、われわれに合ったピンポイントな宣伝の場を作ってくれるんじゃないかというのがあって。自分たちに最適なやり方ができそうな可能性を感じたんですよね。それが最後の理由です」

武道館ライブの宣伝の一環で、全国のイオンモールでアコースティックライブを行ったとき、自分たちのことをまったく知らない人たちがすごく楽しんでくれた。そこに、あるいは音楽フェスを超えるような可能性を感じたという。自分たちのやり方はこっちじゃないかと。それなら所属は関係ないし、より自由にやれる環境に身を置いたほうが効率的に試していける。手探りではあるが、最初にメジャーからインディーズに移籍したときとは見えている景色がまったく違った。

現在は作品を発表できる場が広がり、セルフマネジメントで活動しているバンドも増えてきた。それでもフラワーカンパニーズがたどった軌跡は特異で、同業者から生き残りのコツを聞かれることがしばしばあるという。マエカワさんはもちろん相談には乗るが、明確な答えはいつも出さない。

「自分たちのことだからできるけど、それをほかのバンドに当てはめるとなると、やっぱり全然違うじゃないですか。目標とするところも必要なおカネも違うし、メンバーの価値観や人間関係も違う。バンドは村だから、別の村のルールを当てはめても絶対うまくいかないんですよね」

自らを分析して実証して最適解を掘り下げていくと、自らに最適化しすぎて他者にはどんどんフィットしなくなる。バンド単位でも個人単位でもそこは変わらない。

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