トヨタの販売網と連携し急成長の資源国を攻める−−白井芳夫 日野自動車社長 

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トヨタの販売網と連携し急成長の資源国を攻める−−白井芳夫 日野自動車社長 

「国内でクルマが売れない」現象は、トラックでも例外ではない。自動車各社が生き残りの道をグローバル市場に求める中、日野自動車も2015年までに海外販売目標を現在の2・5倍の15万台に掲げ、トヨタグループの拠点網を活用し資源国に猛攻をかける。だが、サブプライム問題のあおりで北米は急ブレーキがかかり、トラックの世界的な市場動向は不透明になってきた。今後の世界戦略や車種戦略をどう打ち立てるか--。トヨタ自動車時代には商品開発を担当、今年6月に新社長に就任した白井芳夫氏に話を聞いた。

--新興国でのトラック需要をどう見ていますか。

去年9月から今年6月まで、米国、アジア、オセアニアなど世界中を見てきました。そこで強く感じたことは、海外のトラック需要はまだまだ伸びるということ。当社の場合、今いちばん伸びているのはインドネシアやベトナム。こういった国では資源を掘削するわけで、ダンプを使うビジネスが増えているのです。

--日本のトラックは現地でどういったニーズがあるのですか。

運送用というより、むしろ建機のような産業機械としての引き合いが強い。たとえば鉱山の急な坂道を登るとき、現地メーカーなどが造った旧式のダンプはパワー不足で登れないことがよくあります。対する日本製のダンプの場合、トランスミッションのギアの強度が倍ぐらい強く、楽に登っていき、評価を集めている。その意味でも、当社の商品が新興資源国に受け入れられていく余地は、大きいと感じています。

低迷している米国だが将来は販売上向きに

--世界戦略を考えた場合、新興諸国を総花的に攻めるのか、あるいは優先順位をつけていくのですか。

今少し先だなと思っているのは欧州と南米、南アフリカです。ここはいわば欧州圏の市場なのです。規制の問題もあるし、商用車で世界トップの独ダイムラー、2位のスウェーデンのボルボなど強力なライバルがシェアを持っています。出ていくには商品にしろ、販売にしろ、もっと力をつける必要があります。それ以外の地域には、どんどん出ていこうと思っています。

--不案内な現地で、どうやって販売力を高めていくのですか。

当社は、いわばトヨタグループの商用車部門。販売面もトヨタの販売網と連携を深めていきます。たとえば、トヨタは中近東の現地で顔役となっている有力なディーラーをあちこちに抱えています。以前ある国で、トヨタ系代理店に切り替えた途端、これまでゼロだったシェアが25%に急上昇したことがあります。これはトヨタグループだから利用できる、大きなアドバンテージだと思っています。いすゞ自動車や三菱ふそうなど、他社ではできない強みです。

--資源国の需要拡大は、いつまで続くのでしょうか。

かなりの期間で続くのではないでしょうか。世界の資源埋蔵量から、今後使用されるトラック需要を試算したある調査によると、合計で2億3000台ぐらいのダンプが必要だそうです。仮に、総資源の100分の1を運んだとしても、何千万台、何百万台です。資材を掘っていくということが続くかぎり、専用のダンプがさらに必要になると思います。

-- 一方で、北米は苦しい状況が続いています。

今、米国はサブプライム問題が起こって、経済が減速。当社のトラックも昨年の約7000台から約5000台に落ち込んでいます。ただ、将来には1万台程度に上向いていけると見ています。

私が米国に行って感じたことの一つに、競合レベルの低さがあります。乗用車の場合は欧州系、日系など各社が世界中で競争し合っています。しかしトラックの場合、米国は米国系、日本は日系、欧州は欧州系と、競争自体がない。

つまりは各地域内での商品の進化が少ないわけで、今米国では「クラス8」という相当大きいトラックがたくさん走っているんですが、本当にあんな大きいトラックがいるかと……。よく分析すると、あれは積載量が決して多くない。自分で自分を運んでいるようなものです。

むしろわれわれがもっとコンパクトで、燃費がよくて、積載効率のよいものを投入したらどうか。すぐには変わることはないでしょうが、何十年か先には市場が変わってくる。そういう意味で米国は長期的にチャンスがある市場だと思います。

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