トヨタの販売網と連携し急成長の資源国を攻める−−白井芳夫 日野自動車社長 

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--今後トラックでも欧州系などとグローバルな競争が始まりそうです。そのために、今何が必要だと考えていますか。

世界に進出しているといっても、今はまだいすゞ自動車が出た地域を追いかけていく、といった具合に日本車同士での戦いがメインです。欧州メーカーとはまだぶつかっていませんが、そのうち、必ずぶつかることになるでしょう。新興国でも古い車種ではなく、欧州系の新しいトラックと戦う時が来ます。

そう考えると、当社が今持っているトラックのパワー、エンジンのトルクなりが、まだちょっと弱い気がします。要求されるQDR(品質、耐久性、信頼性)を満たしたトラックはもちろん、もう一歩進んだ環境性能や衝突安全性など、そういうものをきちんと備えておかないと、戦えないのではないかと思います。 

--日本で実施したトラックの値上げの反応はどうでしょうか。

運送会社の経営も厳しく、二つ返事でオーケーなんて言ってくれるお客はいません。ただ当社としては、新車を買ってから燃料、部品、整備など、購入から廃車までにかかる総コストのうち、車体価格は12%にすぎません。値上げするのは、その12%分のうち1~3%程度です、というような説得をして、お客の理解をいただこうとしています。

--日本など成熟国へは今後どういった戦略が必要だと考えますか。

マチュアなマーケットには、進化した商品をいかに早く提供できるかが、成長の可否を決める。

現在、当社が力を入れている商品にハイブリッドトラックがあります。ただそのハイブリッド車は、現状では理想的な道路状態でも2割ぐらいしか燃費がよくなりません。高速道路など、効果が発揮しにくい道路状況だと燃費向上効果が1ケタに減ってしまう。その割には値段が同型車種よりも100万円ぐらい高い。いくらハイブリッドが環境によいとはいえ、現在の性能と値段ではお客にとっては釣り合いが取れないでしょう。

だから今、私が開発に指示しているのは、燃費を理想状態で5割以上に引き上げなさい、ということです。そうすれば、どんな道路状況で運転しても最低で2割は燃費がよくなる。私はまた一方で原価を半分にしなさい、とも言っています。こういった商品を造れれば、お客はすぐに元が取れるし、環境に配慮したトラックを使っているということでブランドイメージも上がり、確実に受け入れられていくと思います。

--今後、トラック業界の世界的な提携、再編の可能性についてはどう考えていますか。

私は思うのですが、提携するというのは、まず自分の力が強くなっていないといけない。商用車ではトヨタと当社を合わせても世界で第7位ぐらいのいわば下位メーカーです。そんな下位メーカーが、上位メーカーと提携するには、強力な技術力なり、付加価値がないと対等に話ができない。何も持っていないのにイニシアティブはとれませんからね。

それができないうちは、おそらく総体的な提携というよりはむしろ、あるものを一緒に開発したり生産したりするが販売は別々に、というような部分協業みたいな提携が中心になっていくのではないでしょうか。

たとえば当社の場合、いすゞ自動車と進めている大・中型トラックの排ガス後処理装置の開発や、スカニア(スウェーデン)と行っているいろいろな技術提携があるのですけれども、投資の面から見ても、そういった部分協業におけるwin‐winの関係を追求していくことは、今後も考えられると思います。

(西澤佑介 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

しらい・よしお
1948年生まれ。73年北海道大学大学院工学研究科修士課程修了、トヨタ自動車入社。商品開発畑を中心に歩み、2001年取締役就任、常務、専務などを経て07年6月に日野自動車の副社長。08年6月から現職。

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