金融悪化と市況急落で打撃、淘汰再編に震える不動産ファンド

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 パシフィックホールディングスは大和証券に支援仰ぐ

その物件売却も環境は厳しい。ファンドである以上、出口戦略を進めなければ成功報酬や売却手数料などの果実は得られない。だが採算度外視での売却は元も子もなく、そもそもファイナンスがつかない中では買い手の存在自体が少ない。

ダヴィンチは今期にオポチュニティ・ファンドで2135億円の売却を予定しているが、上期の実績は54億円にすぎない。計算上、下期に2000億円強の売却が必要だが、楽観はできない。「半分近くは価格面で合意している。あとはバイヤーがファイナンスなどをクリアできるかどうか。残り半分は価格面で合意していない。利益を落として売ることはしたくないのでせめぎ合いが続いている」(金子社長)。

不動産ファンド業界ではすでに3月に大阪本社のレイコフが民事再生法を適用申請した。7月にはパシフィックホールディングスが連結最終赤字への減額を発表。同時に大和証券グループ本社の出資を仰ぐ方針も表明した。8月にはアセット・マネジャーズが大株主のいちごアセットトラストに50億円弱の増資引き受けを仰いだ。いちごアセットはクリードの大株主でもある。

含み益豊富な大型物件を多数保有するダヴィンチや、地道に相対(あいたい)での取得を続けてきたケネディクスは、ほかのファンドに比べ余力があるとみられる。が、業界がJ‐REITも含めた本格的な淘汰・再編時代に突入し、これが加速していることは間違いない。金融環境の好転がないかぎり、暗雲は漂い続けるだろう。 


(石川正樹、山田徹也)

 

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