金融悪化と市況急落で打撃、淘汰再編に震える不動産ファンド

 「今回の市況調整は(不動産投資を)35年やっていて初の経験。わずか6~8カ月で、都心と地方を平均して価格が3割程度低下している」。国内不動産ファンド最大手、ダヴィンチ・ホールディングスの金子修社長は、現下の不動産市況について驚きを隠さない。「調整は終わったものの、回復がいつになるかまったく読めない。オポチュニティ・ファンド(期待利回りが高利率のファンド)は環境的に成長すべき時期ではなく、静観すべき時期」といつになく慎重姿勢だ。

不動産市場が暗転したのは昨年夏。物件高騰で都心A級ビルのキャップレート(利回り)が一部で3%台を切り、投資マネーが地方物件に目を転じ始めるなど、市場は過熱感を帯びていた。サブプライム危機を発端に外資系のレンダー(貸し手)は次々に戦線を縮小。不動産ファンドの拡大を支えた外資系証券会社からのノンリコースローン(非遡及融資、NRL)も急停止した。

NRLはCMBS(商業用不動産担保ローン証券)に証券化しての転売が前提。だが、主要投資家の国内金融機関は、金融庁に不動産関連投融資について査定厳格化を求められ、CMBS投資の縮小に走った。CMBS発行額は在庫処分もあり昨年には2兆円超に上ったが、今年は1兆円を下回ることが確実視されている。出口も締められ、外資系レンダーから不動産ファンドに対するマネーフローは一気に干上がった。邦銀大手もNRL残高を積み増してきたが、現状では外資系レンダーの撤収を補うことは望むべくもない。

次々に返済期限が到来 難しいリファイナンス

猛烈な逆風が吹き荒れる現在、不動産ファンドが最大の悩みとするのは、リファイナンス(借り換え)だ。物件取得時のファイナンスも、都心A級ビルを除き困難な情勢になっているが、これは取得を縮小させれば済む。しかし、既存物件に関してはおのずと返済期限が到来する。

昨年前半と現在ではNRLの融資条件は一変、不動産ファンドは資金を取りづらくなっている。NRLの金利動向とほぼ近いCMBS発行時のスプレッドはシングルA格で0.5~1%拡大した。また、物件価格に対してNRLがいくら出されるかを示すLTV(担保掛け目)も平均5%程度低下しているとみられる。

「8月までにリファイナンスは大半を終えた。2~3年前に購入した物件で、この間に賃料が上昇し、バリューが上がったため問題はなかった。ただ、LTVは70~75%だったものが60%程度に低下している。融資実行までの決済期間も長期化している」。金子社長はそう話す。

当然、リファイナンスが困難なケースも出ている。ケネディクスの川島敦社長は「当社ではまだ『ごめんなさい』と言われたことはないが、当然、物件によってできるもの、できないものがある。銀行からはつねに流動性を見せ続けてほしいと言われている」と話す。

他方、アセット・マネジャーズ・ホールディングスは、7月30日に最終利益予想を33億円の赤字に下方修正した。同社は今期、リファイナンスをまったく前提にしていない。返済期限が到来する物件は売却に回す方針だ。「リファイナンスは邦銀、外資系を問わず非常に難しい環境にある」ため、赤字転落を覚悟で価格を犠牲にして売却を急いでいる格好だ。今期中に1500億円程度の不動産売却を予定し、下方修正額53億円のうち不動産売却損は14億円を占める見込みだ。

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