一段と混迷の様相を深める、英国とEUの交渉 期待できない離脱協議の短期決着

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第2段階の協議に進むのは、第1段階の協議が十分に進展したとEU首脳会議が判断した後だ。6月19日の第1回協議で合意したスケジュール通り、順調に進展すれば、10月19~20日のEU首脳会議で第2段階への道が拓かれる。

離脱後のEUとの関係の不透明感や、新たな関係への円滑な移行に対する不安の広がりを抑えるためには、出来るだけ早く第2段階の協議に移行することが望まれる。

しかし、離脱協議の早期決着は期待しがたい。問題の1つは、総選挙とその後の政局の混迷もあって、英国側の具体的な交渉方針の提示が遅れたことにある。英国政府は、今年3月29日の離脱意思の通知に先立ち、2月に離脱戦略の方針を示した「白書」を公表した。

白書では、「ハードな離脱」と包括的なFTAの締結を望む方針のほか、EU市民の権利の保護や、アイルランドの国境問題について経済、社会、政治的な関係を考慮した現実的解決策を見出すなどの大枠は示した。だが、具体的な条件は示さず、離脱に伴う清算金については、項目すら設けられていない。

「アイルランド」は進展も、「清算金」は難航

他方、英国から離脱意思を突きつけられたEU側は、27カ国の首脳会議で合意した離脱協議のガイドラインに沿った離脱協議指令と清算金を含む9つの項目について具体的な交渉方針を示した文書(ポジション・ペーパー)を用意して第2回協議に臨んだ。

第2回協議が終わった段階で、第1段階のメイン・テーマのうち、双方の主張の違いを文書で確認できるのは市民の権利についてのみ。協議終了後の記者会見でEU側のミッシェル・バル二エ主席交渉官は英国に戦略の明確化を繰り返し求めた。

8月の最終週に予定される第3回協議では、アイルランドの国境問題については協議が進展しそうだが、清算金については踏み込んだ議論に入れない見通しだ。

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