民主党にいじめられ、利益「倍返し」
住友大阪セメント・関根社長に聞く  

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――ライバルの太平洋セメントや三菱マテリアル(国内は宇部三菱セメント)に比べると、海外でのセメント工場展開は出遅れたと言われています。フィリピン北部と中国南部の地場セメント会社への出資にとどまっていますが、国内需要を補う意味で、海外での事業展開に本腰を入れるのが不可欠では?

中国は創立100周年の2007年に雲南省の昆明鋼鉄がメーンのプロジェクトに出資をしました。第4工場が操業を始めたばかりで、第5工場の建設も決定し、この建設へも出資を決めたところです。毎年1億円から4億円の配当をいただており、全社の収益寄与の面からも有り難い。副社長格の副総経理として常駐者が1人います。別に昨年は1年間で31人の中堅若手を派遣しました。

国内ではセメント工場を立ち上げることは無理ですが、雲南省の現場で経験を積めば、いずれ東南アジアで同社が経営の主導権を握りながら工場を運営していく場合のコアの人材となってくれるだろうとの思いがあります。

残念ながら、当社は、不況のときに海外から撤退し、組織も人も散ってしまったので、太平洋さんや三菱さんのように潤沢ではないのです。相手国から鉱山の開発許認可を得るのは時間がかかるし、オープンにできませんが、進出プロジェクトのリサーチはしっかりとやっています。

非セメントの自立を急ぐ

――売上高が増えなくても、利益水準はしっかりと維持拡大させる方針を徹底されています。最後にセメントで国内3位の市場シェア19%台を少しでも高めていく決意をお願いします。 

セメント事業は、採算重視で取り組んでおり、足元はむしろシェアが落ちています。これは、復旧・復興需要があるエリアを無理してとっても、物流コストがかかるので、損をして運ぶことになってしまうからです。安定的に操業し、供給するための投資を行っており、これに見合う値上げを率先してお願いしています。

全社の収益拡大という観点でいえば、人員の半分を占めながら全社売上高の20%に過ぎない非セメント事業の自立が遅れているのが悩みどころです。新材料や光電子といった多角化部門は幹部を入れ替えて雰囲気が変わってきました。大化けするものではないですが、半導体や海底ケーブル関連の案件は出始めており、ベトナムで生産開始した産業用蓄電池を除けば、今期中に安定的に黒字計上できるように中身を変えられると考えています。

(撮影:梅谷 秀司)

古庄 英一 東洋経済 記者

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ふるしょう えいいち / Eiichi Furusho

2000年以降、株式マーケット関連の雑誌編集に携わり、『会社四季報』の英語版『JAPAN COMPANY HANDBOOK』、『株式ウイークリー』の各編集長などを歴任。

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