「安部公房とわたし」の真実

女優・山口果林に聞く大作家の実像

18歳のときに出会った23歳年上の作家、安部公房氏との暮らしをつづった「安部公房とわたし」(講談社)を出版し、話題の女優・山口果林さん。2人の関係は安部氏が亡くなるまで続いた。

「日本のカフカ」という評価を喜んでいなかった

――女優の目を通して、大作家の実像が描かれています。正直、安部公房さんがこんな人間くさい人だと思いませんでした。書くものからすると、もっと気むずかしい人だと…。

周囲からも「日本のカフカだ」なんて言われて、難解な本を書くという評価が定着していたと思います。ただ、安部公房さん自身もそうした批評には喜んでいなかった気がします。

――安部さん自身も批評は見ていて、気にしていた。

はい。でも「真意が伝わらない」、と頭に来ていることが多かったですね。

――実際は、カメラやユニークな小物が大好きな「モノ好き」だったり、細かい手作業が好きだったり、料理も達者だったり。とてもキュートな素顔がうかがえます。

料理は達者かどうだったかわかりませんよ(笑)。(自慢料理だと言い、いつか作ってくれると約束した)ギョーザを作ってもらっていませんから。私にとってはとてもチャーミングでかわいい、子どもみたいなところのある人でした。

――本の中には、安部公房の執筆エピソードもいくつか出てきます。「書き進めた200枚もの原稿を、書き出しが間違っていたと反故にし、冒頭から再度取り組む」とか……。実際は、どんなようすで書いていたのですか。

基本的には、私の仕事が一段落すると安部公房さんも執筆を休養するという形だったのですが、何回かは夜中にワープロの前にいる姿は見ています。「疲れた」といって2~3時間も寝ると、のそのそとワープロに向かうという……。ただ、「なるたけなら君が忙しいときに僕は頑張って書く。君の休息期間は僕の休息期間でもある」という形でした。

――うんうんとうなっているような姿はあまり見せなかった。

そうですね。『病状日誌』にあるような、「12時間近く苦痛が持続した」というようなつらさは、私の前ではさらけ出さなった。

――好きな人の前では格好つけたかった。

おならもトイレに行ってするような人でした(笑)。「ちょっと失礼」と言って。かわいいでしょう。

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