「銀魂」が映す偉人のフリー素材化という潮流 エンタメ界は知名度と暗黙知に目をつけた

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最近、映画やマンガ、テレビドラマ、はたまたゲームなど、「歴史上の偉人を登場させながらも、歴史をなぞらない」スタイルの作品が人気を博しており、作品数も増えている。銀魂のように舞台設定を借りながら独自の味付けをする作品もあれば、偉人が転生したという設定で現代社会に登場させたり、問答無用で美少女化させてしまったりするものまでタイプはさまざまだ。

銀魂のような「偉人をモチーフにしたキャラクターが大活躍する」漫画作品には2012年に実写映画化で再ブレークした和月伸宏『るろうに剣心』(『週刊少年ジャンプ』)のほか、2016年にアニメ化した平野耕太『ドリフターズ』(『ヤングキングアワーズ』連載中)や2016年にアニメ化し、劇場版の製作が決定している朝霧カフカ・春河35『文豪ストレイドッグス』(『ヤングエース』連載中)などがある。

ゲーム業界でも乱立している

漫画以上に偉人を元ネタにしたキャラクターが乱立しているのがゲーム業界だ。特にソーシャルゲーム業界では偉人・神話上の人物などがこれでもかとアレンジされて登場している。

たとえば、2016年度のソーシャルゲームで世界第2位の売り上げを記録したディライトワークス作の「Fate/Grand Order」は地域・時代を問わず歴史上の人物や神話上の人物を呼び出し、共に戦うというコンセプトのゲームだ。登場人物の9割近くが歴史上の偉人もしくは神話上の人物だが、キャラクターデザインは元ネタの人物とはかなり離れており、性別が変わっているケースも多々ある。また、DMM GAMES作「文豪とアルケミスト」は明治~大正期の文豪をモチーフとしたキャラクターによる物語だが、外見は女性ユーザー向けのイケメンに調整されている。

これらのキャラクターの特徴として、アレンジは加えられているものの、性格の骨子は歴史上の人物の性格を模しており、歴史上の事件については「実際にあったこと」として扱われている点があげられる。まるでフリー素材のように世界中の歴史から偉人を持ち寄り、作者の表現したい世界をつくり出しているのだ。

この現象の裏側には、飽和状態にあるエンタメ市場の戦術と日本人らしい改造精神があふれている。漫画、アニメ、ゲームとそれぞれにあまりに作品が増えすぎたため、ユーザーは何を基準に作品を選べばいいかわからなくなりつつある。肝心のユーザー側が情報過多で混乱している。

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