「銀魂」が映す偉人のフリー素材化という潮流 エンタメ界は知名度と暗黙知に目をつけた
銀魂の場合、ただ崩すだけに終わらない。コメディ色の強い話では徹底的に笑いを取りに行く反面、ひとたびシリアスな長編となると、偉人たちが凛とした振る舞いを見せる。完全に創作されたキャラクターの場合、この2つのギャップを埋めるのは至難の業だが、偉人には「歴史」という土台がある。
たとえるならば、偉人のフリー素材化は料理における創作和食だ。偉人という最高の素材をどうアレンジし、どう活かし、読者・ユーザーを楽しませるか。元々日本人はゼロからのものづくりよりも改善・改造を得意とするといわれている。偉人のフリー素材化はその特徴を最大限に生かしたアプローチとして、これからも活用されていくだろう。
「どうアレンジされるか」も読者を引きつけている
銀魂に登場する歴史モチーフキャラは史実では悲劇的な最期を迎えていることが多く、読者は銀魂を楽しめば楽しむほど、彼らの行く末を案じることになる。銀魂の新撰組(作中では「真選組」)が史実と同じ結末を迎えるとは限らないが、読者は歴史を知っているからこそ、悲劇の可能性にハラハラしてしまう。偉人のフリー素材化において史実は一種のネタバレであり、ネタバレどおりに進むかも読者にとって大きな関心ごとだ。結果、銀魂は物語そのものの面白さと共に「史実がどうアレンジされるか」という視点でも読者を引きつけ続けている。
もちろん、歴史上の人物が大幅アレンジされることに抵抗を感じる層もいるだろうし、性別まで変わるのはやりすぎだと思う層もいる。その一方、偉人フリー素材化作品をキッカケに元ネタになる人物や歴史に興味を持ち、歴史を勉強し直したり、研究したりするという層も現れている。「偉人のフリー素材化」は新しい表現技法として、歴史と現代人とを繋ぎ、魅力的な作品を生み出す突破口となっているのである。
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