福島県は「再生可能エネルギー」王国を目指す 原発事故を「水力発電」で乗り越えられるか

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今月18日、福島市で開かれた「福島水力発電促進会議」の初会合(中央が著者)
6月18日に「福島水力発電促進会議」が発足した。ふくしま未来研究会の佐藤勝三代表理事が呼びかけて、福島県内の水力発電を開発していこうという集まりである。任意団体だが、福島県内の政財界など関係する幅広い分野の人々が集まった会議となっている。
水力発電というと、一時代前の開発しつくされた電力源というイメージが強いかもしれない。確かに、今後、新規の巨大ダムが建設される見込みはなく、水力発電の総発電量に締める割合は10%足らずにすぎない。しかし、国土交通省で数々のダム建設に携わってきた竹村公太郎氏(元同省河川局長)によると、既存ダムの潜在能力を発揮させれば、現在の2~3倍の水力発電量を確保することができるというのだ。
この「純国産」再生エネルギーの隠れた可能性について紹介した竹村氏の著書『水力発電が日本を救う』は大きな反響を呼んだ。そして、18日に、この竹村氏の提言を福島県で実現すべく、竹村氏を座長にした「福島水力発電促進会議」が発足したわけである。同会が発足した背景と、目指すビジョンを竹村氏に語ってもらった。

既存ダム活用で2兆~3兆円の電力が新たに生み出せる

『水力発電が日本を救う』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

福島県での取り組みをご紹介する前に、既存ダムの活用でなぜ新たな電力がつくりだせるのか簡単にご説明します。

私の提案は主に3つです。

国交省が所管する日本の大きなダムは治水と利水が目的の多目的ダムなのですが、発電している所は少ないのです。県が管轄する補助ダムも発電していないところが多くあります。これらを含め、すべてのダムに発電機をつけて発電しようというのが第1点です。

2点目はダムの運用変更です。1957年に制定された特定多目的ダム法では、治水と利水を目的にしました。この「治水」のため、6~9月の約4カ月間は豪雨に備えて水位を強引に下げています。それはあまりにもったいない話です。3分の1くらい上げて貯めてもいいのではないかということです。それだけでも発電能力は急激に上がります。

今は、特定多目的ダム法が制定された60年前と違って、衛星などによる気象観測が進み、1週間前から台風の進路がわかります。台風が来ると予測されるときには1週間かけて必要な量をゆっくり放流し、来なければ貯めておけばいいのです。ダム湖の上のほうに10メートル高く貯めれば、上に行くほど水面が広がっていますから、それだけで約100メートルのダムを新たに造るのと同じくらい効果があります。

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