福島県は「再生可能エネルギー」王国を目指す 原発事故を「水力発電」で乗り越えられるか

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しかも、雇用・生産誘発効果も高く、地域経済への貢献も見込めます。既存ダムに発電設備を新設することやカサ上げすることなどで、県内のダムや既設の水力発電所など951カ所で合わせて年間最大出力約102万キロワット、電力量80億4000万キロワットの増強が可能だと見込んでいます。

また、公的補助金に依存しない民間資金による水力発電を推進するとともに、収益を県や市町村に還元することで、森林整備や雇用創出、観光振興など水源地域の活性化に利用していきます。併せて、県内企業が水力発電事業に参入することでも新たな雇用が生み出され、さまざまな経済波及効果も期待できます。

先述の、「2040年をメドに県内エネルギー需要量の100%以上に相当する量のエネルギーを再生エネルギーで生み出す」という福島県の再生可能エネルギー推進政策への貢献も大となるでしょう。

「福島モデル」を構築し、全国への波及を目指す

福島水力発電促進会議は、関連の法整備やシステムを研究し、やがては「福島モデル」を構築し、全国へ波及を目指しています。

エネルギーの最先端地域に福島県が生まれ変わる日もそう遠くないと私は思っております。

原発事故で大きなダメージを受けた福島がそれを克服し、自然再生エネルギーで自立した地域になっていこうという姿はすがすがしく、雄々しさを感じさせます。

50年後、100年後には、福島が持続可能なエネルギー地域となり、世界中から人々が訪れるモデル社会として世界のトップリーダーとなることを心から望んでいます。

竹村 公太郎 元国土交通省河川局長、日本水フォーラム代表理事

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たけむら こうたろう / Koutaro Takemura

1970年東北大学大学院土木工学修士課程修了、同年、建設省(現・国土交通省)入省。中部地方建設局河川部長、近畿地方建設局長を歴任し2002年国土交通省河川局長を最後に退官。2004年リバーフロント整備センター理事長。2014年同研究参与。2006年日本水フォーラム代表理事・事務局長。著書に『日本文明の謎を解く』(清流出版、2003年)、『土地の文明』(PHP研究所、2005年)、『幸運な文明』(PHP研究所、2007年)、『本質を見抜く力(養老孟司氏対談)』(PHP新書、2008年)、『日本史の謎は「地形」で解ける』(PHP文庫、2013年)など。

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