元カレをストーカーにした50歳女性の言動 警察に突き出すなら感情で伝えてはいけない
日本の警察は世界の中でも実に優秀な組織だ。たとえば殺人の検挙率を見ると、法務省『犯罪白書』(平成26年)には95.8%と記録されている。昭和25年からほとんど変わらずに95%前後を維持している。これはアメリカや中国など他の先進国と比べても極めて高い数字である。また、レスポンスタイム(110番を受けてから現場に駆けつけるまでの時間)も約7分と、世界的に見ても極めて速い。
ただ、そうはいっても万能ではない。完璧でもない。国民が危機にさらされる事案は毎日発生している。その中には、警察が捜査に着手しない、いや、できない事件もある。たとえば捜査に必要な根拠や材料が足りず、刑事事件として認められない場合がある。ストーカー被害に遭っている人がいても、加害者を逮捕できないケースなどがいい例だろう。
確固たる証拠がなければ警察は動けない
拙著『職業「民間警察」』に詳しく記しているが、私は28年勤めた県警を離れ「民間警察」を称する会社を運営し、警察が動けない事件の被害者たちに力を貸している。当事者が苦痛を感じていても確固たる証拠がなければ警察は動けない。
特に多いのはストーカー問題だ。ストーカー行為と認定できる場合や、けんかの果ての暴力行為などがあった場合は別だが、そのような事件性がないかぎり、個人の色恋ざたは個人で解決してくれというのが警察の立場だ。だが、放置していると命にかかわることもあるほどの危険をはらんでいる。
ストーカー行為と認定できる場合や、けんかの果ての暴力行為などがあった場合は別だが、そのような事件性がないかぎり、個人の色恋ざたは個人で解決してくれというのが警察の立場だ。
「付きまとわれて困ってるの」
ある女性から相談を受けたのは、夏の盛りのことだった。彼女はホームページで私の会社の業務内容や経歴を確認して依頼してきた。
ドラマなどで描かれる付きまといの被害者女性のイメージは、おとなしく、か弱いタイプだろうか。実際、そういうタイプの女性が狙われるケースは多い。しかし、彼女はどれにも当てはまらなかった。オフィスのソファにドスンと座り、黒いシャネルのバッグから取り出したハンカチで顔をあおぐ。薄紫のワンピースは、50歳の女性が着るには少し若すぎる。茶色の巻き髪をかき上げ、ため息交じりに「はあ、困っちゃう」と言った。
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