フリーゲージ列車がスペインで成功したワケ 開発で苦戦する日本を横目に時速330km運転

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軌間変更施設を通過し、在来線に乗り入れるマドリード発の「レンフェ130」 (バリャドリッド郊外のバルデスティージャスにて、Photo by Melcoman/Wikimedia Commons)

九州新幹線西九州ルート(長崎ルート)は、新鳥栖―武雄温泉間で在来線区間を走る。軌間の異なる新幹線区間と在来線区間の両方を同一の列車が走ることができるようにと、長年にわたって開発が進められてきたのがフリーゲージトレイン(FGT、軌間可変電車)である。

しかし、不具合が見つかるなどの理由で開発が遅れて2022年の開業にはFGTは間に合わず、途中駅で新幹線列車と在来線列車とを「対面乗り換え」でしのぐ事態となった。現在、国の技術評価委員会が不具合の対策を検証しているが、雲行きは怪しい。FGTの地元では「いっそのこと、ルート全体をフル新幹線仕様で建設してほしい」という声も上がる。

一方、FGTの本家本元ともいえるスペインでは、異なるレール幅の線路を自由に走れる最高時速330キロメートルの超高速列車の生産を本格的に開始し、2020年には新型車両の運行を目指しているという。高い技術を誇るはずの日本でできないことがなぜスペインでできるのだろうか。

スペインのFGTは時速330キロで走る

スペイン国鉄はこのほど、最高時速330キロメートルで走行可能な軌間可変電車「タルゴAvril」15編成を車両メーカーのタルゴ社に正式発注した。スペイン国内の軌間「広軌(1668ミリメートル)」とフランスやドイツなど大半の欧州諸国で使われている「標準軌(1435ミリメートル)」の両方で高速線区間を走れるようにしたものだ。

スペインにおけるFGTの歴史は古い。TEE(ヨーロッパ横断特急)の1つで、軌間可変装置を持つ「カタランタルゴ」が1968年にスペインとフランスの地中海沿いを走り始めた。現在では、タルゴという名前そのものが軌間可変車両の代名詞となっている。

スペインでは、かつてタルゴ(=FGT)を使った寝台車がスペインとスイスやイタリアなどとの間を行き来していた。列車の速度が全体的に遅く、航空券が高かった時代にはこれで十分に需要があったからだ。

とはいえ、1990年代から欧州では客車編成による優等列車が徐々に衰退、フランスのTGVやドイツのICE、あるいはタリスといった300キロ超の高速列車ネットワークが充実するにつれ、軌間が違うスペインが「蚊帳の外」に置かれる状況に差し掛かっていた。いくら軌間可変技術で先行するスペインといえど、時速300キロメートルを超えるような高速で走ることは不可能とされてきたからだ。

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