TASAKI、ファンドに翻弄された「10年」の決着 いったいファンドはいくら儲かったのか

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この投資は7年後の2015年7月に出口を迎える。MBKは保有する全優先株と引き換えに普通株1400万株を手にした。

このうち全体の3分の1を会社に100億円で自己株取得させ、残る3分の2は公募売り出しによって192億円で処分。手にした合計金額は実に292億円。7年で投資額の4倍の回収に成功している。

年商規模の借金を抱える新生TASAKI

その一方でTASAKIはこの2015年7月の自己株取得のために、自力で25億円まで減らした有利子負債が100億円超にハネ上がり、純資産は72億円へとほぼ半減した。

そしてそれから2年も経たずに打ち出された今回の株式非公開化。MBKは今度はいったいいくら稼ぐのだろうか。

スターダストは6月26日に開催される臨時株主総会での決議を経て、8月1日付でTASAKIを吸収合併する。存続会社はスターダストなので、TASAKIを吸収すると、TASAKIの時価純資産と買収総額(318億円)の差額が「のれん」として資産計上される。

2017年1月末時点のTASAKIの帳簿上の純資産は88億円なので、時価と簿価に大きな差がなければ、230億円の「のれん」が資産計上される。ファンド主導のTOBを受けた会社が、必ずといっていいほど抱えている、悪評紛々の「自己のれん」である。

もしもTASAKIを存続会社にしてスターダストを吸収合併すれば、のれんは計上されず、318億円の自己株が純資産にマイナス計上され、TASAKIは230億円の債務超過に転落する。存続会社を変えるだけで債務超過会社が資産超過会社に早代わりするのである。

公開買付届出書記載のとおり、MBKが186億円を出資したとしても、純資産の1.2倍もの自己のれんを新生TASAKIは抱えることになる。もし再上場を考えるのであれば、すかいらーくやスシローグローバルホールディングスのように、純資産を超えるのれんを抱え込んでしまう。

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