一流の社長は「泣いている社員」を放置しない

取引先の理不尽な要求にどう応じるべきか?

「ウチの社員に暴言を吐いたのは許されない。あなた方は何様と思っているのでしょうか。こちらから言う値段を下げてほしいというのは、結構です。しかし、原価を割るような法外な要求をする。あろうことか、この社員の人格を傷つけるようなことを言われる。それがあなた方の商売、経営のやり方ですか」

多少語気を強めて言うと、相手方は驚いた様子で、ただただ落ち着きのない目できょろきょろしていましたが、なにより連れて行ったその社員が驚いていました。返す言葉もなく沈黙している相手方に、「そのような考え、物言いをされてまで取引をお願いするつもりはありません。こちらからお断りします」と言って、席を立ちました。

社員は帰り道で「ありがとうございました。私の至らぬことでご迷惑をお掛けしてすみませんでした」と涙声で言います。私は「いや君は100%悪くない。なにも謝る必要はないよ」と応じました。

理不尽で非常識な筆者にも鉄槌

こういうことは、よくありました。わが社の出版部員が有名な執筆者の先生と東京のニューオータニのフロント前で夕方の6時に待ち合わせをしました。しかし、1時間経っても2時間経っても先生は来ない。3時間、夜の9時まで待ったけれども来ない。今のようにケータイがある時代ではありませんから連絡の取りようがありません。

とうとう出版部員は、自分が日にちを勘違いしたかもしれないと思って帰りました。翌日、その先生から電話があり「私がフロント前に行ってみたら君はいなかった。けしからん」と激怒。「もう君のところでは私の本は書かない」と言われたそうです。それで私のところに出版部員が部長と一緒に報告に来ました。「で、その先生は何時に来たの?」と聞くと「9時半だそうです」と小声で言う。

その報告を聞いて、こんな非常識がまかり通るんだとこの編集部員が思い込めば彼のこれからの成長にもかかわると思い、「その先生に私が会って話をする」と告げて、その先生と会うことにしました。「先生、あまり非常識なことでウチの若い社員をいじめるものではないですよ。6時の約束だったのでしょう。先生は3時間半も遅れてきている。なぜご自分が悪かった、申し訳なかったと彼にひと言、言えないんですか。なぜ彼をしかるのですか。私は、ウチの社員が悪かったとはまったく思っていません。先生がもうお前のところから俺の本を出さないと仰(おっしゃ)るならば、どうぞどうぞ。構いませんよ。と言うより、私のほうから先生の本の出版は、以降お断りします」と言って帰社しました。

出版部員と責任者を呼んで、この話をすると2人とも表情は一変して明るくなりました。

私はPHP研究所において34年も経営責任者を担当していましたから、このようなことはいくらでもありました。

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