大躍進「東ソー」、不振だった塩ビ復活のなぜ 営業利益「初の1000億円突破」の牽引役に

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山口県周南市にある南陽事業所内の塩ビ基幹設備は高操業が続いている(写真:東ソー)
総合化学の大手、東ソーが空前の好業績を謳歌している。5月10日に発表した2016年度決算は、本業の儲けを示す営業利益が60%増の1112億円にまで拡大し、前2015年度に記録した過去最高益を大幅に更新した。
牽引役は、塩化ビニル樹脂(塩ビ)を柱とするクロル・アルカリ部門。塩ビやウレタン原料の採算が急改善し、同部門だけで479億円もの営業益をたたき出した。塩ビは上下水道や農業用水路のパイプ管、建築資材などに使用される代表的な汎用樹脂で、東ソーは台湾プラスチック、韓国LG化学に次ぐアジアの大手だ。
長らく塩ビの事業環境は厳しかった。国内需要は1990年代をピークに縮小。国内各社はアジアに活路を求めたが、中国企業が凄まじい勢いで能力拡大に走ったため、域内の需要が伸びているにもかかわらず、アジアの市況は低迷が続いた。
その儲からない汎用品の典型だった塩ビ事業がなぜ、急に元気を取り戻したのか。そしてまた、同事業の好調は今後も続くのか。山本寿宣社長に聞いた。

アジア市況が大幅に好転

――塩ビ事業の収益が急激に回復しています。

東南アジアやインドの消費量が増える中で、攪乱要因だった中国勢の安値輸出攻勢が弱まったため、昨年途中から需給が引き締まり、アジア市況が大幅に好転した。塩ビはどれだけのスプレッド(主原料と製品市況の価格差)を確保できるかで収益が決まるが、アジア市場における昨年度のスプレッドは2004年以来の高水準だった。

こうした追い風を受け、当社もインドへの輸出や東南アジアでの現地生産販売の採算が大幅に改善している。これほど急な市況改善は想定外で、3カ年の新中期計画の1年目で早くも最終2018年度の営業利益目標(850億円)を大きく超えることができた。嬉しい誤算だ。

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