急拡大する「糖質制限」市場が日本を救う! 3000億円を突破!新市場をこう攻めよ

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これは将来の話ではありますが、日本農業の変革について、今のうちから考えておくことは、必ず将来の役に立つはずです。

中小企業にもチャンスはある

最後に、糖質制限市場の拡大は、中小企業の活性化にも役立つというお話をいたします。

2010年くらいから糖質制限食に注目が集まるようになり、さまざまな企業が糖質制限食の商品に参入してきました。参入企業の多くは小さな企業です。

糖質制限食の商品は、一般の食品に比較すると市場規模が小さいですし、それまでの主力商品との兼ね合いの問題もあり、大企業は本腰を入れて参入しづらかったのだと思います。ところが、小さな企業は比較的小回りが利きます。

たとえば、大手の菓子メーカーでは、砂糖を使わない菓子の開発をしようとしても、自社の主力は砂糖を使った菓子なのですから、どうしてもイメージ的に矛盾が生じます。一方で糖質たっぷりの菓子を売っておいて、他方で糖質制限の菓子を開発しても、「健康によい」と宣伝すれば、「おまえのところは、糖質たっぷりの菓子も売っているじゃないか」と言われてしまうわけです。

そのため、大手企業で早くから糖質制限の商品を出すことができたのは、酒メーカーばかりでした。もともと、酒類には糖質の含有量が比較的少なく、糖質ゼロの商品を出しても、企業イメージ的に矛盾とは見えにくかったからでしょう。

このような事情から、糖質制限市場に参入してくれるのは当初は小さな食品メーカーが中心でしたが、次第に熱心な企業が増えていったのです。

たとえば、街のケーキ屋さんや地方の老舗企業などが、糖質制限の商品という新しい分野にチャレンジしてくれるようになりました。

こうして、中小・零細企業から、多くの糖質制限商品が生まれてきたのです。

今では、糖質制限商品を大手企業も出し始めていますが、まだまだ糖質制限への理解は深まっているとはいえず、糖質量の表示や情報の不確かな商品もあるのが現状です。小回りの利く中小企業が開発した、心のこもった質のよい糖質制限商品へのニーズはまだまだあるように思います。

それに大手企業は、先ほども述べたように、それまでの糖質中心の主力商品を否定してしまうというジレンマもあります。今後も、中小企業が糖質制限市場で活躍できる余地が大きいと思うのです。

これからの日本では、もっと多くの糖質制限食品が開発され、もっと大きな需要に応えるようになるはずです。

「正しい知識」が広まれば、ますます糖質制限食が普及するからです。糖質制限食のさらなる広がりで、明るく楽しい未来が開けるようにと願っています。

江部 康二 高雄病院理事長

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えべ こうじ / Koji Ebe

内科医、漢方医。高雄病院理事長、日本糖質制限医療推進協会理事長、江部診療所所長。1950年生まれ。1974年京都大学医学部卒業。1978年から高雄病院に勤務。漢方療法、絶食療法、食養生、心理療法なども取り入れ、独自の臨床活動を行ってきた。1999年高雄病院に糖質制限食を導入し、2001年から本格的に取り組む。2002年に自らも糖尿病であると気づいて以来、さらに研究に力を注ぎ、「糖質制限食」の体系を確立。自身の糖尿病も克服する。

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