昔から、大将には、おおむね軍師といわれる人がついていました。黒田官兵衛、山本勘助、竹中半兵衛、直江兼続などは、代表的軍師として、今に名を残しています。そのような有能な軍師を持つことによって、成功を収めた大将は少なくありません。軍師の意見、進言、助言を聞くことは大いにあっていいのですが、その意見を用いるか用いないかは、大将が最終的に全責任をもって決めるべきです。なにもかも軍師の言うとおりにするようでは、大将とはいえません。
こう説明をすると、「意見を用いないのなら軍師は必要ないのではないか」と疑問に思うかもしれません。現場からは「カネの無駄遣いだからコンサルタントを雇う必要はない」という短絡的な意見も出てくるかもしれません。
しかし、それは間違っています。結果的にそれを用いないとしても、その意見、進言、助言を聞くことによって、事を進めていくうえでの危険、陥穽(かんせい)を知ることができ、より周到な配慮、対応をすることができるのです。
コンサルタントに「経営者としての経験」はない
そもそもコンサルタント(軍師)は、優秀な経営者(大将)としての経験があるわけではありません。理屈、頭で考える、いわば評論家のような存在です。理屈と過去の数字で報告書をまとめ提言する。そこには、ほとんど「人間」というものは前提になっていません。前提としているとしても「理論的な人間」であって、その会社の社員の「生きた人間」ではないのです。
松下幸之助という人が、「松下電器が、なぜ発展成長したのか」という講演をしたことがあります。その理由を9つ挙げています。自分が凡人であったこと、人材に恵まれたこと、方針を明確に提示したこと、理想を掲げたこと、時代に合った事業に取り組んだこと、派閥をつくらなかったこと、ガラス張りの経営をしたこと、全員経営をしたこと、公の仕事をしているのだと社員に訴えたこと。それぞれの説明は紙幅の関係から割愛させていただきますが、この9つの理由をさらに纏めれば、松下幸之助という経営者が、社員を励まし、社員に誇りを与え、社員に感謝し、社員に感動を与えたこと、それが成功の理由だといえるでしょう。
このようなことは、社内を知り、社員を知り、社内の雰囲気を知り、なにより己を知っていなければならないということです。このことを経営コンサルティング会社が把握できるかということになれば、それはムリというものです。
要は、コンサルタントに経営を丸投げし、その言うとおりにしたら、経営は必ず失敗するということです。依頼し、報告を受けても、1つの参考意見程度に受け止め、最終的には、社長が、自身で悟って戦略を決めなければならないのです。
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