ですから、経営コンサルタントが「正解」を示してくれて、それを忠実に実行すれば経営がうまくいくということは、決してありえないのです。
経営コンサルタントはあくまでも、相談相手、助言者にすぎません。経営コンサルティング会社、あるいはコンサルタントから出てきた戦略なり、対策なり、報告書を、経営者は鵜呑みにしてはダメです。1つの重要な参考意見とはしつつ、最終的な戦略、最終的決断は、あくまでも社長たる人が考えて考えて考え抜いて、自分で決断しなければならないのです。
「あ、そうですか。この戦略がいいのですね。そういう対策を取ればいいのですね」と、熟慮深耕することなく取り入れても、それは社長としての「魂」が入っていませんから、それでは社長自身も、また、社員はなおさらのこと、経営に取り組んでいても、必然、力弱いものになる。結果として、経営はうまくいかない。行き着くところは衰退、衰亡、そして倒産、消滅への道をまっしぐら、ということになります。
つまり、経営コンサルティング会社に丸投げしてはいけない、そのまま経営活動に取り入れてはいけないということです。
大将は占いの結果に左右されてはならない
前田利家といえば、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将。その利家の所領にある末森城(現・石川県羽咋市)を佐々成政が大軍をもって囲んだという知らせが入ったとき、利家は直ちに救援のために出陣しようとします。そのとき、1人の家臣が、「占いの上手な山伏がおりますので、出陣の吉凶を占わせましょう」と勧めます。
利家も一応それに従いますが、山伏がやってきて書物を取り出し、筮竹(ぜいちく)で占おうとすると、利家が、「自分は卦(け)がどうあろうと、出陣する決意をしているから、そのつもりで心して占うように」と申しつけたのです。
すると、その山伏は、即座に書物を懐にしまうと、「本日は吉日で、しかも、いまが吉時でございます」と答えましたので、利家も「お前はまことに占いの上手だ」と、即刻出陣して勝利を収めたということです。
これが大将であり、これが社長であり、これが経営者のあり方というものだと思います。社長として、経営者として、部下なり、他の人の言葉に耳を傾けることは極めて大切です。しかし、どのようなときにも、大将自ら、経営者自ら、社長自ら、「このようにしよう」「こうするのだ」というものを持っていなくてはなりません。そういうものを持ったうえで、コンサルタントの報告を取り入れ、「活用する」ことが大事なのであって、自分の考えをなにも持たず、ただ、コンサルタントの意見なり、報告に従うということだけなら、指導者として、また経営者、社長として失格だといわざるをえないでしょう。
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