4月10日、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が作成する「日本の将来推計人口(平成29年推計)」が、厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会人口部会で公表された。本連載記事「将来推計人口の怪、甘い出生率予測は禁物だ」では、公表が遅れていることに触れていた。
この将来推計人口は、2019年に実施が予定されている公的年金の財政見通しの検証に用いられる。結果を見ると、5年前の前回推計と比べて、わずかばかり明るい見通しとなっている。
人口減少の速度は前回推計より遅く
前回2012年の将来推計人口では、日本の総人口は2060年には約8674万人、2110年には約4286万人となると推計されたのに対し、今回の将来推計人口では、2060年には約9284万人、2110年には約5343万人となるとの見通しが示された(出生中位・死亡中位推計の結果。以下同様)。前回推計よりも人口減少のスピードが遅くなる見通しだ。
また、日本の総人口が1億人を下回る年次は前回推計では2048年となっていたが、今回は2053年と5年遅くなった。これは、安倍晋三内閣が「一億総活躍社会の実現」を掲げていることを「忖度(そんたく)」した結果というわけではない。機械的に推計しており、根拠は比較的明瞭だ。近年における30~40歳代の女性の出生率実績の上昇等を受けて、推計の前提となる合計特殊出生率(推計初年から50年後)が、前回推計の1.35から1.44に上昇したことと、2015年の国勢調査の結果、推計の前提となる2015年の人口が前回2012年に推計していた人口予測を上回ったことが、大きく効いている。
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