志村けん「アイーン」をパクったら違法なのか 一発芸は知財として保護される?されない?

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稲穂:著作者人格権は、著作者本人の「個性」にかかわるものなので、経済的な権利である財産権としての著作権とは異なり、他人に譲渡することはできません。

木本:芸人が舞台でやるモノマネとかはどうなるんですか。

アイデアは盗まれても仕方ないもの?

稲穂健市(いなほ けんいち)/東京都生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科博士前期課程終了。大手電気機器メーカーにおいてソフトウエア関連発明の権利化業務、新規事業領域における企画推進などに従事。約7年にわたり、米国カリフォルニア州にある研究開発拠点の運営にもかかわる。弁理士、米国公認会計士。現在は東北大学特任准教授として仙台在住。科学技術ジャーナリストとしても活動し、稲森謙太郎の筆名による著書多数。『楽しく学べる「知財」入門』(講談社現代新書)は本名による初めての著書(撮影:梅谷秀司)

稲穂:著作権の観点で考えると、何をまねるのかという点に注意しなければいけません。歌をそのまま歌ったり少し変えて歌ったりすると、作詞者や作曲者の著作権の侵害となります。さらに、独創的な振り付けも著作物となるので、勝手に振り付けを踊ると、振付師の権利も侵害することになります。

ですが、歌手に無断でその実演を模倣してもその歌手の著作隣接権は侵害しませんし、歌手本人の顔まねとか、そのしぐさをまねた場合に至っては、そもそも著作権は関係ありません。もちろん、その人の名誉を傷つけるようなことをすれば名誉毀損になりうるでしょう。

木本:アイドルの振り付けが著作物となる場合、その権利は振り付けを考えた人にあるんですね。ギャグの場合はどうですか。創作、芸術だと思うのですが、著作権はないのですか。

稲穂第1回でお話ししたように、ものすごく短いフレーズには権利は発生しませんが、コントのシナリオは著作物になりうるので、それを同じように再現すると著作権侵害となる可能性はあります。ただし、アイデアが一緒であっても、せりふ・言い回しやコントの人物設定など、表現として現れている部分が全然違っていれば問題はありません。

木本:えー、アイデアこそが大事じゃないんですか。

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