ジェネリックが使われない−−笛吹けど踊らぬ医療現場 <シリーズ・くすりの七不思議>

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 後発品は本当に信頼に足る医薬品ではないのか。そうした疑問に答えるため先発品と後発品の比較評価を行ったのが、大阪府保険医協会理事長でもある高本英司医師だ。

高脂血症患者への処方薬を、先発品(メバロチン錠、第一三共)から後発品(プラバスタチンNa錠「アメル」、共和薬品)へ変更。比較可能な43人の総コレステロールの平均値について見た。すると、メバロチン服用中と、中止直前と、後発品服用後1回目、服用後2回目の値は、いずれもほぼ同水準となった。つまり、後発品に変えたから総コレステロールを下げる力が弱まったということはなかったのである。同様の調査を降圧剤についても実施。これらの資料を患者へ見せ、後発品への変更を促進している。

高本医師は「後発品はダメ、と言っている医師の多くは、多分に感覚的なもの」と指摘する。ただ「後発品は数が多い。これだけ数があると、本当に効果があるのはどれなのか確信が持てなくなる」とも打ち明ける。確信がないから、使い慣れた先発品を使い続ける医師も多い。

一方で、後発品とはいえ、必ずしも安くならないケースもある点は注意が必要だ。確かに、薬価は先発品よりも安い。だが「患者が支払う“薬代”には薬局での調剤報酬などが含まれる。この結果、高くなるケースもある」と大阪・南薬剤師会センター薬局の高橋直子薬局長は指摘する。後発品の使用促進のためにつけられた後発品調剤加算や後発品情報提供料などが加わるからだ。

高橋氏の薬局では近隣の薬局と連携し、後発品の在庫を地域で持ち合っている。小規模な薬局だと多くの在庫は抱えられない。一方、後発品メーカーに注文すると1~2週間かかることがあるからだ。

このように後発品促進を実践している病院、薬局はある。だが、下の図が示すように、5月になっても患者の7割が後発品を勧められていないというのが現実だ。

信頼は一朝一夕に得られるものではない。日本ジェネリック製薬協会は、昨年10月、「信頼性向上に向けた取り組み」を発表。安定供給、品質確保、情報提供について、達成すべき目標を掲げた。今年3月末までの目標はすべて達成できた。が、即日配送を実現しているメーカーは55%。品切れ品目のあるメーカーも23%あるなど、課題は残る。信頼確保へ、後発品メーカーが実績を積み上げていくことが求められている。


(週刊東洋経済)

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